SNSの新トレンド「スラブの視線」とは?
トレンドはどこから?
「スラブの視線(славянский взгляд)」と呼ばれるものは通常、凝視して見据えるような、やや眉をひそめたような目つきであると説明される。
多くの外国人にとって、この表情は険しく、恐ろしげにさえ感じる。相手に見られているというより、まるで評価され、かつ距離を取られているように思えるのだ。
このトレンドが生まれたきっかけは、米国のファーストレディ、スロベニア生まれのメラニア・トランプだ。彼女の写真の多くに、ネットユーザーはまさにこの「スラブの視線」を見出した。心を閉ざしたようで険しく、浮ついた雰囲気は微塵も無い。SNS上ではこの表情がすぐに東欧と関連付けられ、「スラブ風の」と呼ばれるようになった。
その後、ブロガーたちはこうしたイメージを応用して、「億万長者を魅了する」、あるいは「ミステリアスなパワーを感じさせる」視線であるなどと主張するようになった。
外国人から見た「スラブの視線」
バズった動画の多くで、この表情はほとんど演劇的とも言える表現で披露されている。出演者は目を細めたり、表情を急激に変化させたり、コケティッシュな仕草をしたり、過剰に冷たい感じを演出している。こうした動画は、コメディっぽいシーンを挿入している事も多い。例えば、英語での質問が理解できないらしい、東欧系女性との会話:
-“Oh, my God! You are so beautiful. How old are you?”(オーマイゴッド!君はなんて綺麗なんだ。何歳だい?)
-“Romania”(ルーマニア)。
西側のオーディエンスにとって、このような近寄りがたさ、厳格さ、そしてクールビューティー的な冷たさは、エキゾチックに映る。
一方、ロシア語圏のブロガーたちもアンサーとして、自分達のバージョンの「本物のスラブの視線」を披露した。これらの動画では雰囲気がガラッと変わり、演出や感情は無い。彼らが言うには、これは複製可能な動作やポージングなどではなく、精神状態そのものだからだ。
「スラブの視線」を表現するには
ロシア語圏のネットユーザーたちいわく、外国人は幾つかの典型的なミスを犯しているという。
まず、余計なコケティッシュ。「スラブの視線」の一丁目一番地は、シンパシーを一切見せないことだ。
もう1つ多い間違いは、余計な顔の表情。 演技過剰なケースが多い。「スラブの視線」は、長く、冷静に、不動で対象にフォーカスするものだ。
そして3つ目が、ミステリアス。この視線は、一義的に解釈できない。そこには疲労、アイロニー、熟慮、あるいは思考の欠如など、あらゆる要素が含まれ得る。こうした不確定性が、魅力の源だ。
なぜスラブの美感が再注目されたのか
実は、「スラブの視線」が関心を集めたのは、大きなトレンドの一部に過ぎない。SNS上では数年前からロシア・東欧の美感が持て囃されている。毛皮の帽子、毛皮のコート、イクラ、レトロな自動車、ソ連製のインテリア、2000年代初頭のポップミュージックなどだ。
最初にバズったのは、Russian Girlという歌を用いた動画群だった。その後、思いがけずKatya Lelの楽曲『My Marmalade』が世界的にヒットした。
やがてネット上に登場したのが、際立って派手で女性性を強調しているが、それでも冷たく近寄りがたい印象を受けるイメージ、Russian bimboだ。
もう1つの音楽的トレンドが、「I don’t speak Russian but」である。ロシア語話者ではない人々が、歌詞を理解できないままロシア語の歌を歌うのである。撮影者たちいわく、大事なのは歌詞を理解することではなく、歌を感覚的に捉えることだという。
視線を超えた、文化的コード
「スラブの視線」は、インターネットの集合知が生んだ新たなトレンドで、ステレオタイプやビジュアル文化、他者のメンタリティを外見から読み取ろうという試みが混ざったものだ。
あるいは、こうした複雑さが、「スラブの視線」を再現する難しさなのかもしれない。