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キューブリックのナポレオン映画はソ連のせいで頓挫した?
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リドリー・スコット監督の映画『ナポレオン』が封切られたが、少なからぬ歴史愛好家は失望したようである。ナポレオンの生涯をうまく映画化した作品がなかなか現れないことを残念に思っている人は多い。
だが、実は1970年代にナポレオンに題材をとった傑作が生まれていた可能性があった。映画史に燦然と輝く巨匠、『スパルタカス』、『フルメタル・ジャケット』、『2001年宇宙の旅』を世に送り出したスタンリー・キューブリックがナポレオンを主人公に一大巨編を撮影しようと計画していたのだ。しかも、主演はジャック・ニコルソンが構想されていた。
残念ながら、野心的な構想はついに実現しなかった。原因は、ソ連・イタリア合作のセルゲイ・ボンダルチュク監督作品『ワーテルロー』(1970年)である。
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ソ連の名監督が送り出した超大作であり、膨大な数のエキストラを使った戦闘シーンの圧倒的スケール感は今も色あせない(ソ連軍は撮影のために1万5千もの兵士を提供した)。しかし、同年の世界興行で本作は全く振るわなかった。
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キューブリック版『ナポレオン』のプロデューサーたちはこの結果を重く見て、直ちに製作を中止した。キューブリックはその後も製作再開を試み続けたが、ついに断念した。
頓挫した『ナポレオン』だったが、キューブリックはその構想の一部を1975年製作の歴史巨編『バリー・リンドン』で実現した他、サイコスリラー『アイズ ワイド シャット』(1999年)にも活かしている。
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だが、歴史映画ファンとキューブリックファンの期待に応えられるかもしれない作品もある。スティーブン・スピルバーグとHBOは現在、キューブリック版の脚本をベースにTVシリーズ『ナポレオン』を製作中だ。