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『ゲーム・オブ・スローンズ』、『ホワイト・ロータス』にも出演したスター俳優ユーリ・コロコリニコフ
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コロコリニコフは1980年モスクワ生まれ。5歳で母親と兄とともにカナダに移住し、2か国をまたいでの暮らしが始まった。
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2000年、映画『In August of 1944』(原題『В августе 44-го…』)で主演。00年代はモスクワの劇場で舞台俳優として活動したが、次第に映画に惹かれていった。
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相変わらずカナダとの二重生活を続け、アメリカに行っては出演機会を探した。アルバイトをして生活し、金が尽きるとビーチで野宿したという。そして2014年、ついに運が向いてくる。コロコリニコフはドラマシリーズ『ゲーム・オブ・スローンズ』でゼン族の族長であるスター役に抜擢されたのである。
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コロコリニコフ自身が語るところによれば、この役をもらったきっかけは、詩人ウラジーミル・マヤコフスキーを演じたことだったという。彼はキャスティングの前日は一日中、映画『VMayakovsky』(原題『ВМаяковский』)のマヤコフスキーの自殺シーンを含む、難しい場面の稽古を行っていた。結果、『ゲーム・オブ・スローンズ』のキャスティング・ディレクターとの面接には興奮状態で挑むことになった。そこで提案されたのが、族長・スターの役だった。
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「このキャラクターはかなり重苦しい雰囲気を持っています。食人族で、暗い空虚さを抱えており、こうした要素を表現する必要があったのですが、実に快適に演じられました」
と、コロコリニコフは語っている。
コワモテのロシア人俳優は注目を集め、潜入したKGBのスパイを描くジョー・ワイズバーグのドラマ『ジ・アメリカンズ』、リュック・ベッソン脚本の『トランスポーター イグニション』、サイモン・ウェスト監督の『コードネーム:ストラットン』、パトリック・ヒューズ監督の『ヒットマンズ・ボディガード』、マイケル・ベイ監督の『6アンダーグラウンド』などに出演した。
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2020年にはクリストファー・ノーランの『TENET テネット』にも出演。この時の事を、次のように回想している:
「クリスはどういうわけか、自分の周りの全てのエネルギーを吸収するようで、撮影が終わると、もう寝る以外は何もできなくなります。彼はブラックホールのように、そのシンギュラー・ポイントに吸い込むのです」。
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コロコリニコフにとって、ロシアでの撮影にもハリウッドでの撮影にも変わりは無い。
「場所と、一緒に仕事をするクリエイティブ・クルーが違うだけ」と語る。
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どのような役柄であろうと、真剣に取り組むのは同じだ。例えば、ドラマ『心配性たち』(原題『Озабоченные, или Любовь зла』)の出演時にはロッククライミングをマスターした。ドラマ『アムーラ』(原題『Амура』)に出演した際には、日本語のフレーズを練習した。
コロコリニコフのフィルモグラフィーはメロドラマ、コメディー、アクション、ファンタジー、サスペンスと、多岐にわたる。
「役者なら誰でも、何か過激で刺激的な物を求めていて…役柄だけでなく、危ない橋を渡って、危険なエネルギーに遭遇するようなことを求めていると思います。役者として、他に何ができますか?ただカメラの前で笑っているだけ?それより、もっと自分を試したいですよ」
と彼は語る。
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2023年、ロシアではブルガーコフ原作の『巨匠とマルガリータ』がヒット。この映画でコロコリニコフはコロヴィヨフ役を務めている。ロシア民話をもとにしたファンタジー映画『Wish of the Fairy Fish』(原題『По щучьему велению』)では、ロットマン卿を演じた。
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昨年はコロコリニコフにとって重要な一年となった。 ポストアポカリプスものの『The Last Ronin』(原題『Последний ронин』)では主役の復讐者を演じた。『クレイヴン・ザ・ハンター』ではアーロン・テイラー=ジョンソンやラッセル・クロウと共演を果たした。また、チャーリー・ヒュストンの原作をダーレン・アロノフスキーが映画化した『Caught Stealing』にも出演した。
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2025年2月16日には、コロコリニコフも出演している『ホワイト・ロータス』の第3シーズンがNetflix上で配信スタート。第3シーズンの舞台はタイ。制作陣は「死、精神性、悟りを風刺的な視点から」扱ったストーリーを予告している。コロコリニコフ自身は、自らの役柄について、「気の弱い方は見ない方がいい」とだけコメントしている。
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私生活では、タイシヤとソフィヤの二女の父でもある。
2か国をまたいでの撮影スケジュールをどうこなしているのか?コロコリニコフによると、不満は一切なく、「楽しんでいる」とのことだ。
休日の好きな過ごし方は、「寝転がって猫を撫でる」こと。ミヤザキ、ミャウ、レボフスキという3匹のメインクーンを飼っている。