ロシアの「国民的飲み物」は紅茶、ウォッカではない!

Daria Yakovleva / Getty Images
Daria Yakovleva / Getty Images
ロシア人が紅茶をこよなく愛していることをご存じだろうか。

 いまでも何時間もかけてお茶を淹れ続ける習慣が残っており、その源流にはロシアの伝統器具「サモワール」がある。

 今日のロシアの家庭やレストラン、カフェでは、紅茶や緑茶、赤茶をはじめ、フルーツティー、ハーブティー、多種多様なブレンドティーまで、実に幅広い種類の茶が楽しまれている。

パブリックドメイン
パブリックドメイン

 ロシア人の好みはシンプルだ。 ストレートで飲むか、レモンと砂糖を合わせるのが一般的である。 年配の女性が紅茶を飲みながら角砂糖をかじる姿を見かけることがあるが、これは「vprikusku(ヴプリクスク)」と呼ばれる伝統的な飲み方だ。

 ジャムや蜂蜜を添えることも多い。 紅茶は寒い季節に体を温めるだけでなく、家族や友人が集う社交の場としても欠かせない。 ロシアの家庭を訪ねる際には、ケーキやビスケットなど、何か甘いものを手土産に持っていくのが礼儀だ。

 ソビエト時代、コーヒーは高価な嗜好品だったため、日常的に飲まれることは少なかった。 紅茶とチーズ、あるいは紅茶と簡単なサンドイッチという組み合わせは、当時の典型的な食卓の風景だった。

 地方の村では、サモワールで何時間もお茶を淹れ続け、家族で10㍑もの紅茶を飲むことも珍しくなかった。 時には、ソーサーに紅茶を注いで冷ましてから飲むという、今では見かけなくなった独特のスタイルもあった。

 興味深いことに、ロシアには「コンブチャ」が世界的に流行するよりずっと前から、同様の発酵飲料が存在していた。 「チャイノイ・グリブ(お茶のキノコ)」と呼ばれ、甘い紅茶に酵母と細菌を加えて発酵させたもので、家庭の窓辺の大きな瓶で育てられていた。 見た目は決して美しいものではなかったが、健康に良い飲み物として広く親しまれていた。