
ロシア語で最もよく使われる罵り言葉が「ブリン」(パンケーキ)なのはどうして?

「ブリン」は、パンケーキやクレープのロシア版で、最も伝統的なロシア料理の1つだ。ただし、ロシア人が、食べ物とはまったく関係のないところでこの言葉を使っても驚かないでほしい。
その場合の「ブリン」は、単なる派生語で、ロシア人は1日に何十回もこの言葉を使うことがある。
- 誤って何かを落とした? – 「ブリン!」
- 大事なことを忘れて、最後の瞬間にやっと思い出した? – 「ブリン!」
- 腕かつま先を何かにぶつけた? – 「ブリンッ!!!」
なぜロシア人は、英語の「crap」(くそ、ごみ、たわごと)に類する言葉を使わずに、料理を意味する言葉を用いるのか?
「『ブリン』は、コミュニケーションに際し、男性と女性の両方の、やや下品な口語表現として非常に広く使われるようになった。ロシア語の下品、粗野な口語表現のなかで、使用頻度の点でトップを占めている(助詞などの「補助詞」に次ぐ)」。「Gramota.ru」は、このように書いている。
この言葉には長い歴史があり、実は、遠回しな婉曲表現だ。つまり、ある言葉を隠して、別の言葉に置き換えている。この場合は、礼儀正しく道徳心のある人なら決して口にしないような罵り言葉を、別の言葉に置き換えているのだ。それは、合法的に印刷したり放送したりできない言葉だ(ソーシャルメディアのアルゴリズムでさえ、この言葉の使用を禁止する可能性がある)。
これは、実は「B ワード」であり、ここで示すことはできない。でも、女優エリザベス・オルセンが深夜トーク・バラエティ番組『レイト・ナイト・ウィズ・コナン・オブライエン』で、ロシア語で悪態をついている動画が話題になったのをご存じかもしれない。念のため、ここにリンクを残しておこう。
ロシア語では、卑猥な罵り言葉(マート)はタブーとされているが、実はこれには長い歴史がある。昔、農民たちは、悪口を言うと邪悪な力を引き寄せると信じていた。そして、20世紀には、悪口を言うことは、無教養で粗野で無礼な人間であることを意味した。
とはいえ、人はまったく悪態をつかずに生きていくことはできない。そこで、ロシア人は、日常的に使うために、よく知られている罵り言葉に似ているけれども、実際には罪のない無害な意味をもつ他の言葉をいくつか考え出した。
たとえば、罵り言葉を婉曲に表す、「Ё」の文字を含む単語はたくさんある(「ёлки-палки」、「ёмое」)。または、ロシア人は、卑猥な「П(P)ワード」の代わりに、「pesets」(песец〈ホッキョクギツネ〉)と言う。
という次第で、「ブリン」は、卑猥な罵言のBワードにたまたま発音が似ていた、というわけではない!