ロシア語学習で難しい5つのポイント:外国人に意見・感想を聞いてみた
1.格変化
外国人は誰もが、格変化が一番難しいと言う。
ロシア語には6つの格があり、形容詞、一部の代名詞、そして形動詞は、名詞の性、数、格と一致する。つまり、これらの品詞も、多種多様な格変化をするわけだ。名詞や代名詞のいくつかの格変化は、何とか克服できるかもしれないが、それらにしたがって変化する、他の品詞の語尾となると、ロシア人でさえも混乱することがある。
一例を挙げよう。
- 主格:Красивая лиса(美しいキツネ)
- 生格:Красивой лисы
- 与格:Красивой лисе
- 対格:Красивую лису
- 造格:Красивой лисой
- 前置格:Красивой лисе
「中国語には、このような文法上のカテゴリーがないので、初心者にとっては、この難関を乗り越えるのは至難です。最初は丸暗記しなければなりませんでした。しかし、徐々にルールを習得し、楽になっていきました」。中国人のウェンフェン・カンさんはこう振り返る。
インド人のガリマさんは、滑稽な出来事を思い出す。ある時、カフェでどの格変化にするか迷った挙句、彼女は、「砂糖なしの紅茶」(чай без сахара)ではなく、「砂糖なし、紅茶なしの紅茶」(чай без сахара и без чая)を注文したという。
2.「動きを表す動詞」
「пойти」、「идти」、「ходить」、「ездить、「ехать」… ロシア語には、「動き」を表す動詞が多数あり、外国人をしばしば混乱させる。
「これらの動詞をトルコ語に翻訳すると、たった一つの単語になります」。トルコ人のヒラルさんは語る。例えば英語では、これらの動き、移動を表す動詞のほとんどが「to go」という一つの単語になってしまう。
「Пойду полежу」(ちょっと横になってくるよ)とか「сходил погулять」(散歩に行ってきたよ)といった表現は、外国人学生を途方に暮れさせるだろう。
「動きを表す動詞は、いまだに完全には理解できていません――とくに接頭辞が付くものは。接頭辞が変わると、単語の意味も変わってしまうからです」。マダガスカル人のロランドさんはこう語り、次の例を挙げた。「уехать」(〈乗り物に乗って〉去る)と「приехать」(〈乗り物に乗って〉来る)は、まったく異なる、意味が正反対の単語である。
3.完了体と不完了体の動詞
「外国人にとって、動詞の不完了体と完了体を区別するのは非常に難しい」。キューバ人のマイリンさんは認める。
多くの外国人がこの問題に悩まされている。ロシア語の動詞はすべて、完了形と未完了形に分けられる。
前者は「что сделать?」(〈未来の具体的な一回限りの状況において〉何をすべきか?)、後者は「что делать?」(〈一般的な意味で〉何をすべきか?)という問いへの答えで用いられる。
不完了体と完了体の動詞は、見た目が酷似していることもあるが、ちょっとした違いがある。接頭辞や接尾辞によって、不完了体だったり、完了体だったりする。そして、それぞれの状況によって、どちらを使うかが決まる。ロシア語を流暢に話し、すべての格をマスターしている人でも、残念ながら、動詞の「体」について間違えることがある。
4.強勢(ストレス)
「単語のどこに強勢を置くかを覚えるのは、とても難しいです」。アフガニスタン出身のディナさんはため息をつく。
確かに、ロシア語には、この点での明確なルールがなく、外国人は多くの場合、すべての強勢の位置を暗記しなければならない。そしてここで、彼らは別の困難に直面する。単語の形が変わると、強勢の位置も変わることがあるからだ。つまり、単語の語尾が変化すると、強勢の位置も変化し得る。例えば、「учИтель」(教師)は、単数形では、大文字の位置に強勢があるが、複数形では「учителЯ」となる。
しかし、外国人はあまり心配する必要はないだろう。なにしろロシア人自身がしばしば混同するのだから。
5.発音
ロシア語のアルファベットに接した外国人は、発音で苦労するだろうなあ…と分かっている。「ы」(y)、「ц」(ts)、「ш」(sh)、「щ」(shch)などの文字は、見ただけでビビるではないか!
しかし、「р」(r)や「л」( l)のような一見、ありふれた音にも難しさがある。ロシア語では、こうした「普通の」音でも、発音が独特だからだ。
中国人のウェンフェンさんにとって、「р」の発音はとても難しい。中国語にはそのような音が存在しないからだ。
マダガスカル人のレベッカさんは、「л」の発音に苦労している。「был(あった、存在した)」(byl)という単語を発音するには、彼女にとっては普段と違う仕方で声帯を緊張させなければならない。
ロシア語の早口言葉「корабли лавировали, лавировали, да не вылавировали(korabli lavirovali, lavirovali, da ne vylavirovali)」(帆船が間切ろうとしたが、間切れなかった)は、彼女にとっては拷問に等しかった(*「間切る」とは、向かい風の際にジグザグに進むことで、風上に向かう帆走のこと)。