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リアルな体験談:ロシア留学のお値段は?

パヴェル・クズミチェフ
本サイト中国版編集員が体験を語る。

 ハルビンで荷造りをしていた時、親族や友人たちがバックパックにインスタントラーメンと封筒をねじ込んだ。封筒には「授業料の足しに。空腹を我慢するな」と書かれていた。M.V.ロモノーソフ記念国立モスクワ大学のジャーナリズム学部に入学して1年。確かに、モスクワで腹を空かせることは無いと分かったが、そのためには、モスクワ生活では何にどの程度の費用がかかるか、理解しておくことが肝要だ。表や統計は用いず、具体的に説明してみようと思う。

地域とお金:大学の授業料は?

 この点において、ロシアは中華料理と似ている。北京と、四川の小さな料理店では同じ料理でも値段が全く異なる。ロシアもその点では同じで、ロケーションがクレムリンの見える場所か、ウラル山脈が見える場所かで違いは大きい。

 トムスクやニジニ・ノヴゴロドの大学の場合、年間の費用は約21万~50万ルーブル(47万~111万円)が必要となる。日本円に換算すると、おおよそ2800~6683ドルである。米国と比べると格段に安い。もし国立モスクワ大学、MGIMO、あるいはペテルブルクのHSE(高等経済学院)の卒業資格を得ようとする場合は、年間54万~125万ルーブル(約7200~16700米ドル・約120万~278万円)を準備しなければならない。もし英語のカリキュラムを希望するなら、最大で150万ルーブル(約334万円)程度となるだろう。そう、二大都市の「ブランド」は高価なのだ。だが、その学位は労働市場でも相応に評価され、特にアジア圏での評価は非常に高い。

 ここでライフハックを1つ。トップクラスの大学には、地方に支部がある。HSEのペルミ支部の場合、費用はモスクワの半分程度。獲得できる卒業証書は同じものだ。

モスクワ、卒業式後のロモノーソフ・モスクワ国立大学卒業生たち
ヴァレリー・シャリフルイン / TASS

 2025/2026年度の外国人留学生向けに、以下に幾つか例をあげてみよう:

  • モスクワ:国立モスクワ大学の人文科の場合は54万ルーブル(約120万円)から。同法学部の場合は72万ルーブル(約160万円)から、高等経済学院は56万ルーブル(約124万円)から。
  • サンクトペテルブルク:国立サンクトペテルブルク大学の場合は30万7300ルーブル(約68万円)から、ペテルブルク高等経済学院は45万ルーブル(約100万円)から。
  • カザン:カザン連邦大学の場合、分野に応じて17万5920ルーブル~43万9980ルーブル(約39万~98万円)。
  • ノヴォシビルスク:国立ノヴォシビルスク大学の場合、45万ルーブル(約100万円)から。
  • トムスク:国立トムスク大学の場合、21万6300ルーブル~42万7400ルーブル(約48万~95万円)。

 このように、2大都市と地方の違いは歴然としており、費用は2~3倍もの差がある。それだけではない。

住居:DASから共同住宅まで

 ロシア留学では、試験に次いで頭の痛い課題である。

 まず格安プランとして、学生寮。地方の場合、3人部屋なら月額1630~2060ルーブル(約3630~4600円)程度。モスクワの場合、例えば国立モスクワ大学の名高いDAS(大学院生・インターン寮)の場合は120ルーブル(約267円)、FDS(学生寮別館)だと7140ルーブル(約15900円)となる。リーズナブルで環境も良く、雰囲気も陽気。キッチンでアラブ出身の学生に餃子の焼き方をレクチャーし、カルダモン入りコーヒーの淹れ方を教えてもらう。ちょっとした文化交流だ。

ミクルホ=マクライ通りにあるロシア諸民族友好大学(RUDN)の校舎にて
アントン・ノヴォデレシュキン / TASS

 ワンランク上が、賃貸住宅だ。モスクワ生活の厳しさはこの辺りから始まる。大学まで地下鉄で40分のベッドタウンでワンルームを借りる場合、月額4万7000~8万7700ルーブル(約10万5000~19万5000円)程度の費用がかかる。ペテルブルクの場合、同様の賃貸住宅は1万5000~6万ルーブル(約3万3000~13万3000円)程度。カザンでは1万8000〜6万5000ルーブル(約4万〜14万4000円)、トムスクでは1万5000〜5万4600ルーブル(約3万3000〜12万1600円)程度である。

 ワンポイントアドバイス:単独で部屋を借りるのはおすすめしない。ロシア人の上級生の隣人を探そう。あなたは秩序とお茶を提供し、先方からは契約を手伝ってもらって、お湯の供給がストップする時期を教えてもらおう。

食事:ソバの実カーシャ、ケバブ、そしてコメ不足

 私がモスクワでまず最初にやったのが、プロフソユズナヤ通りの中華食材店を見つけることだった。醤油無しで生活するのはつらい。しかし地元の食習慣に合わせてみると、ロシアは低予算の食事に非常に都合が良いことに気付く。

パトリス・ルムンバ名称民族友好大学のカフェテリアの学生たち
アレクサンドラ・ムドラツ / TASS

 自炊の費用対効果は抜群だ。「野菜、鶏肉、穀類」というメニューでいけば、「ピャチョーラチカ」(低価格帯のスーパーマーケットチェーン)もしくは市場でのひと月分の買い物額は8000~1万2千ルーブル(約1万7000~2万6700円)程度に抑えられるだろう。国立モスクワ大学の学生食堂(大盛りだし美味しい)で食事をすれば、昼食は250~350ルーブル(約556~780円)。さすがに飽きたか、自炊が面倒になったら、24時間営業のケバブ屋が250ルーブル(約556円)程度だ。腹いっぱいになるし、いかにも学生気分を味わえる。

交通:タクシーより地下鉄宮殿

 モスクワの地下鉄が大好きだ。本当に。なにしろ、90秒間隔で運行しているし、駅は博物館さながら。学生定期券はひと月985ルーブル(約2193円)。モスクワ郊外の場合は1390ルーブル(約3095円)。これで大都市を無限に乗り回せる。北京や上海など中国の大都市でも学生定期券は概ね同額か僅かに高い程度だが、客観的に見て、モスクワ地下鉄の方が清潔で速い。

コムソモリスカヤ地下鉄駅
セルゲイ・カルプシン / TASS

 地方の場合、トムスクやヤロスラヴリのような小都市ならバスかマイクロバスで事足りる。1回の乗車料金はおよそ40ルーブル(約90円)。

医療:DMS*は安心へのパスポート

 ロシアの医療制度の外国人に対する基本姿勢は、「保険にさえ加入してくれればいいよ」というシンプルなもの。確実に入っておこう。DMS(任意医療保険)は年間で概ね5000~1万2000ルーブル(約1万1100~2万6700円)だから、高額とは言えない。風邪、インフルエンザ、扁桃腺炎などにかかった時に心強い。

ワクチン接種中のクリニック来訪者
グリゴリー・シソエフ / Sputnik

 この医療保険に含まれているのは何か?医師による訪問診療、診療所での診察(確かに行列はあるが、そのかわり無料だ)、基本的な歯科治療。では、ロシアの医療はどのようなものか?スパルタである。医者は決して貴方を甘やかさないが、診断は的確だ。インド出身の知人女性は発熱して病院に行ったが、「心づけ」を渡す事なく、すぐに点滴と各種検査が行われたことに驚いていた。

 *なお、外国人留学生向けのDMSは、一般の外国人向けDMSとは違うことに留意する必要がある。また、留学生は大学の国際課を通じてDMSの申請を行う。

ロシアvs世界:どちらが財布に厳しいか?

 率直に言って、ヨーロッパは確かに魅力的だが、費用面もまた異なってくる。

 ドイツ:授業料は無料とはなっているものの、学期ごとの納付金、保険、食費込みで生活費を考慮すると、ひと月に4000米ドル(約30万ルーブル・約64万1900円)は必要になってくる。1年間で計算するとモスクワ大学の授業料+賃貸住宅と同程度の金額だが、ロシアの場合は寮費の割引を受けて節約できるチャンスがある。

 フランス(パリ):パリ15区のごく小さなワンルームの賃料は700~900ユーロ(約12万9700〜16万6700円、約6万1350〜8万2300ルーブル)。ひと月の費用は1300~1500ユーロ(約24万800~27万7900円、約11万3711~13万917ルーブル)に達する。これは、人口100万人以上の規模のロシアの中規模都市で暮らすよりも、かなり高額だ。

 アジア(中国/日本/韓国):ソウルもしくは東京の場合、住宅費はモスクワと比肩し得るか、もっと高い。権威ある私立大学の学費は、日本なら年間130万~210万円(約8140~1万3149米ドル、約60万9570~98万4690ルーブル)。

パトリス・ルムンバ名称民族友好大学の寮の一室にいる学生たち
アレクサンドラ・ムドラツ / TASS

 こうしてみると、寮で暮らしつつモスクワの最高峰の大学で1年間学ぶと、かかる費用はおよそ60万~80万ルーブル(約133万6200~178万1700円)となる。これはロンドンの1年間の留学費用と比較しても半分から3分の1程度の額で、外国人が中国の有名地方大学へ留学する費用とほぼ同程度だ。

まとめにかえて

 私は親戚からの封筒と、ロシア語をマスターする希望をもってロシアにやってきた。それからほぼ1年。封筒は空になり、ロシア語は文法の頑強な抵抗に遭っているが、モホヴァヤ通りを歩いてクレムリンが見えてくる時、ここに来るだけの価値はあったな、と再確認する。ロシアは、「安くスパルタン」ではない。コツさえ熟知しておけば、「お手頃価格で高品質」なのだ。

 そのコツ自体も、それほど複雑ではない。寮で生活し、地道にロシア語を勉強し、ちゃんと医療保険に加入して、アルバート通りのレストランには入らないこと(観光客のためのワナである)。こうしたことを守っていれば、夏休みに帰省するチケット代も捻出できるかもしれない。

 というわけで、私はこれから「マグニート」(住宅地周辺に展開する低価格帯の食品スーパーとしては「ピャチョーラチカ」と並ぶ大規模チェーン)へ行く。イタリアンパスタを試してみたところ、高くついた割に美味しくなかったので、今日買うのはソバの実である。