ロシアの大学の「予備学部」では何を学ぶのか?

キリル・ジコフ / Sputnik ロシア人民友好大学(RUDN)の学生
キリル・ジコフ / Sputnik
ロシア語が分からないことは、もはやロシアで高等教育を受けるうえでの障壁ではない。外国人を受け入れているすべての大学では、正規課程の履修を始める前に、1年間にわたってロシア語を学ぶことができる。

 ロシアの教育制度は、外国人に対して非常に開かれている。他国から来た学生は、ロシア連邦政府の奨学枠を利用して無料で学ぶことができるほか、その後すぐに自分の専門分野の正規課程に進めるよう、1年間をロシア語の学習だけに充てることもできる。

 現在、予備学部はロシア国内の300校(!)の大学に設置されている。

予備学部とは何か?

 予備学部とは、外国人志願者がロシア語による教育課程を履修できるよう準備する、ロシアの大学内の組織である。

 実質的には「0年次」に当たり、授業は通常、9月から6月までの1年間にわたって行われる。学生はここで、時間の大部分をロシア語の学習に費やす。ロシア語をまったくの初歩から、必要とされるレベル(B1またはB2)まで学ぶことができる。

プーシキン大学 プーシキン記念ロシア語大学の語学証明書
プーシキン大学

 さらに「予備学部」では、将来選択する専門分野に関連する科目のほか、ロシアの文化や歴史に関する補足的な講座も設けられている。

 課程を修了すると、学生にはロシア語能力の水準を証明する公式の修了証書が交付される。その後は、ロシア国内のどの大学にも出願することができる。

 予備学部では、ロシア連邦政府の奨学枠を得て無料で学ぶことも、自己負担で学ぶこともできる。学費は、選択する大学や専攻分野に応じて、年間6万5000~75万ルーブル(14万5000~167万円)である。

外国語としてのロシア語の学習

 外国語としてのロシア語教育を行う主要な高等教育機関の一つが、モスクワにあるプーシキン記念ロシア語大学(通称はプーシキン大学)である。ここでは、人文科学、経済、医学・生物学、自然科学、工学・技術、テクノロジーなど、さまざまな分野別の課程を履修することができる。学生はロシア語に加え、自分が選択した分野に属する5科目を学ぶ。

プーシキン大学 プーシキン記念ロシア語大学の留学生たち
プーシキン大学

 「プーシキン大学の予備学部で学び始めてからわずか2か月後には、ロシア語で自分の考えを伝えられるようになり、半年後にはほぼ自由に話せるようになった」。インド出身のサウラブはこう語る。

 「その後、私はロシア諸民族友好大学(旧名はパトリス・ルムンバ記念民族友好大学)に入学したが、学生寮を探すことも、新しい環境に慣れることも、すでに問題ではなかった。このことについて、私は予備学部に感謝している」

文化への理解とロシアでの生活への適応

アレクセイ・スホルーコフ / Sputnik タンボフのマースレニツァ祭りに参加する留学生
アレクセイ・スホルーコフ / Sputnik

 予備学部は、単に語学を学ぶ場ではなく、学生がロシア文化に親しみ、ロシアでの生活に適応するための場でもある。プーシキン大学予備学部長のガリーナ・ニコラエヴナ・クプツォワによれば、予備学部の活動は、ロシア語が母語話者との交流やロシアでの生活のためだけでなく、職業や新たな専門分野を身につけるためにも必要であることを、学生に理解させることを目的の一つとしている。

 「外国人学生がわが国の文化・価値観の背景に適応できるようにすること、異文化間の対話を考慮すること、学習者の人格的成長の可能性を開くことも、私たちは重要な課題だと考えている。まさにそのため、プーシキン大学では毎年、予備学部の受講生を対象として、ロシア語およびロシア語で学ぶ諸科目に関する国際オリンピックが開催されている。これには、ロシアの大学で大学入学前教育課程を履修している80か国以上の若者が参加している」。クプツォワ学部長はこう述べた。

 学生は、教室での正規授業やオリンピックだけでなく、会話クラブ、コンクール、文化行事にも参加する。

 「さまざまな科目や授業のほか、私たちはモスクワ動物園やプーシキン美術館などへ見学に出かけ、コンクールにも参加した。例えば、私はロシア語の歌を歌った!」と、サウラブは語る。   

プーシキン大学 プーシキン記念ロシア語大学にて
プーシキン大学

 「私が何よりも感謝しているのは、すばらしいロシア語の先生方に恵まれたことだ。先生方は、私たち外国人学生にとって、ロシアという国を案内してくれる最初の導き手だった。先生方は言葉だけでなく、この新しい世界を開かれた心でどのように理解すればよいかも教えてくれる。先生方の支えと熱意のおかげで、私は困難な時期にも前へ進み続けることができた」。インドネシア出身の予備学部修了生アトハリ・ファルハニは、ロシアについての自著の中で記している。

オンラインの予備学部

 ロシアの一部の大学では、予備学部の全課程をオンラインで履修できるようになっている。例えば、外国人学生数で首位に立つロシア諸民族友好大学には、デジタル予備学部がある。課程修了後に大学が発行する書類は、ほかの大学でも受け入れられる。授業は最新の双方向型教育プラットフォーム上で行われ、チューターには24時間365日連絡することができる。

プーシキン大学 プーシキン記念ロシア語大学の予備学部
プーシキン大学

 また、複数のロシアの大学が共同で、ネットワーク型予備学部を設立した。これは、複数の専門科目についてオンライン講座を履修できるようにすることを目的としている。その設立には、プーシキン大学、ヴォロネジ国立大学、モスクワ国立工科大学「スタンキン」、ピョートル大帝記念サンクトペテルブルク工科大学、トムスク工科大学が参加した。

 例えば、ニジニ・ノヴゴロドのロバチェフスキー大学でも、オンライン予備学部を利用することができる。

自国にいながら入学準備をする

 ロシアの大学の予備学部以外にも、世界の多くの国にロシア語学習センターがあり、大学入学に向けた準備を始める手助けをしている。

 最大規模の拠点は、CIS諸国およびアジア諸国に設置されている。最も成功している事例の一つが、ハノイのプーシキン・センターである。2025年5月、ロシアとベトナムの両政府は、プーシキン記念ロシア語大学ハノイ分校を基盤として、このセンターを設立する協定に署名した。

プーシキン大学 プーシキン記念ロシア語大学ハノイ校の学生たち
プーシキン大学

 ロシアの大学への入学準備をするには、サイト「education-in-russia.com」を閲覧することを勧める。このサイトは多言語に対応している。そこで希望する専攻分野を選び、大学の一覧や入学条件を確認することができる。

 さらに、最寄りのロシア連邦交流庁(独立国家共同体・在外同胞・国際人道協力局)の事務所に問い合わせれば、自国でロシア語を学ぶための選択肢を案内してもらえる。

 また、2024年には、ロシア連邦交流庁が、将来ロシアの大学で学ぶ学生を対象としたネットワーク型予備学部をアフリカに設立した。この教育課程は、ロシアの主要4大学の参加のもと、ザンビア、タンザニア、エチオピアで実施されている。

(なお、当サイト上で、今すぐオンラインでロシア語の学習を始めることもできる)