
ユーラ・ボリソフ、ハリウッドでロシア詩人役に挑む

ロシアの俳優ユーラ・ボリソフが、ハリウッド映画『デニス』にロシア人詩人役で出演することが明らかになった。ボリソフは映画『預言者』(2023年)で文豪・プーシキン役で主演し、国内外で注目を集めた実力派で、アカデミー賞ノミネート経験も持つ。
新作『デニス』は、イギリスの女優エミリー・モーティマーの長編映画監督デビュー作。ソビエト連邦の末期を舞台に、ロシア人詩人とイギリス人留学生との関係を描いたドラマで、主人公デニス・ノヴィコフをボリソフが演じる。

物語はモーティマー監督の実体験をもとにしているとされ、1990年にオックスフォード大学の学生だった彼女がインターンシップで訪れたモスクワでノヴィコフと出会ったことが着想のもとになっている。一方で、二人はロンドンで知り合ったという説もあり、正確な出会いの場については諸説ある。

ノヴィコフは当時、ロシアの前衛詩人たちによる詩人劇団「アルマナック」のメンバーとしてツアーに参加。ロンドン滞在中にはノーベル文学賞を受賞した詩人ヨシフ・ブロツキーとも交流し、その詩に深い感銘を与えたという。
ブロツキーはノヴィコフの詩集『一月の窓』に序文を寄稿し、「ノヴィコフの詩は自己との対話であり、批判があるとすれば、それは世界や社会に向けられたものではなく、自己自身への問いかけである」と評価している。

モーティマーとノヴィコフは最終的に別々の道を歩み、ノヴィコフは2004年にイスラエルに移住。その年、心臓発作により37歳で亡くなった。