モスクワとペテルブルク以外の都市の美術館、選りすぐりの7選
1.国立ニジニ・ノヴゴロド美術館
ニジニ・ノヴゴロド・クレムリン内にある、国立ニジニ・ノヴゴロド美術館が入居する軍政長官邸。
一般にも開かれた美術館としてはロシア最古級。メインの建物はニジニ・ノヴゴロドのクレムリン内にある、元軍事知事の建物である。
有名な画家では、リョーリフ、クストーディエフ、ネステロフ、レーピンらの作品がある。一部の作品は、ニジニ・ノヴゴロド出身のマクシム・ゴーリキーが寄贈したもの。
画家ヴィクトル・ヴァスネツォフの作品『空飛ぶじゅうたん』(1880年)の前に集まる来館者たち。
18~19世紀のロシア美術のほか、アヴァンギャルド美術や古ロシアのイコンのコレクションも展示されている。
目玉展示の1つは、コンスタンチン・マコフスキーの『ニジニ・ノヴゴロド市民に呼び掛けるミーニン』。ロシア美術史上最大の大きさ(698 x 594cm、41,4㎡)を誇る大作である。最近、この画は上ヴォルガ河岸通りの別館の専用ルームで展示されるようになった。
『ニジニ・ノヴゴロド市民に呼び掛けるミーニン』の絵画の前に集まる美術館の来館者たち。
2.セルプホフ歴史美術博物館
美術館が入っているマラエワ邸。
モスクワ郊外の小都市セルプホフが誇る観光スポットの1つが、この美術館である。かつてこの地で財を成した女性商人アンナ・マラエワの旧邸宅である歴史的な建物が美術館になっており、収蔵品も、当初は彼女のコレクションからスタートした。
セルプホフ歴史美術博物館の館内。
シーシキンの森林画など移動派の作品、ナタリア・ゴンチャロワやロベルト・ファリクのアヴァンギャルド絵画、フランドルやイタリアの巨匠たちの作品なども展示している。
コンスタンチン・マコフスキーの『結婚式の前に』は、館内でも特に目立つ大作だ。
コンスタンチン・マコフスキーの『結婚式の前に』。
3.トゥーラ州立美術館
トゥーラ州立美術館。
1917年の革命後、国有化された地元貴族の絵画コレクションが収蔵品の中心を占める。
アイヴァゾフスキー、レーピン、レヴィタンらの傑作の他、イタリア、オランダ、フランスなど西欧の大家たちのコレクションも豊富。
「狩猟用キャビネット」。
また、マレーヴィチやカンディンスキーといったアヴァンギャルド作家らの作品もある。
ヴァレンティン・セローフの『光り輝くフェイボス』。
中でも注目したいのは、ボリス・クストーディエフの『美人』 。ヴァレンティン・セローフの巨大な『光り輝くフェイボス』も見逃せない。
ボリス・クストーディエフの『美人』。
4.トヴェリ州立絵画美術館
美術館が入っているトヴェリ宮殿
美術館の建物は、トヴェリ宮殿。かつてエカテリーナ2世がペテルブルクからモスクワへの道中を過ごす快適な宿として建設された豪華な建築だ。
トヴェリ宮殿の内部。
皇帝の一族のコレクションが収蔵品の中核をなし、そのため、皇帝の肖像画も複数ある。
ピョートル・ドロージン作。エカチェリーナ2世の肖像画。M.シバノフによる1787年の原作の複製。
スリコフ、レヴィタン、レーピンら巨匠たちの作品に加え、アレクサンドル・デイネカ、イーゴリ・グラーバリ、アルカジー・プラストフらソ連時代の公的芸術の興味深い作品の数々も。中でもプラストフの『初雪』は、彼の代表的な有名作。
アルカジー・プラストフの『初雪』
5.国立ペルミ美術館
ペルミ美術館の新館。
革命後に篤志家らが地道に収集した作品の数々が収蔵品の始まり。美術館の建物として提供されたのは救世主顕栄聖堂で、2023年まで使われていた。
専用に建設された新館がオープンしたのは2026年3月のこと。
木彫彫刻の展示室。
ヴェレシチャーギン兄弟、ワシーリー・スリコフ、アルヒープ・クインジら巨匠たちの絵画を含むロシアの造形美術のほか、アジアの美術工芸や、古代の陶器の一大コレクションも見もの。また、北方の木造彫刻の貴重な作品群にも注目したい。
「牢獄のキリスト」彫刻の断片、ソリカムスクの作品、18世紀。
6.国立ノヴォシビルスク美術館
シベリア革命委員会の建物は現在、ノヴォシビルスク美術館として使われている。
シベリア随一の美術館は、イコン制作から移動派、そしてアヴァンギャルドまで、ロシア絵画の歴史を追える展示となっている。
ノヴォシビルスク美術館で行われる「ミュージアム・ナイト」イベント。
ソ連政府の移行でオープンした美術館で、シベリア革命評議会の建物が割り当てられた。
収蔵品はトレチャコフ美術館やロシア美術館など、モスクワやペテルブルクの大美術館のコレクションから割譲された。
ニーナ・ヤノヴァ=ナドリスカヤ『収穫』(1934年)。
また、ニコライ・リョーリフとそのヒマラヤ風景画にも大きなスペースが割かれている。
ニコライ・リョーリフ『雪の尾根、サンタ・アナ』(1917年)。
7.サマーラ州立美術館
サマーラ州立美術館は、旧ヴォルガ・カマ商業銀行の建物に位置している。
地元の商人コンスタンチン・ゴロフキンが1897年に収集を開始したコレクションが収蔵品のベースとなっている。豪華な建築は、かつてヴォルガ・カマ商業銀行のものだった。
塑像によってくまなく装飾された内部は、正面玄関の大理石階段や円柱、アールヌーヴォー調の珍しいステンドグラスの窓などの装飾と合わさって目を惹く。
メイン階段。
アイヴァゾフスキー、サヴラソフ、マコフスキーら19世紀の巨匠たちの作品の他、古ロシアの膨大な絵画コレクションがある。
展示用「大理石の間」。
1910~1920年代のロシア・アヴァンギャルドの展示は、サマーラ州立美術館の誇り。アリスタルフ・レントゥーロフ、ピョートル・コンチャロフスキー、ダヴィド・ブルリューク、ミハイル・ラリオノフ、オリガ・ロザノワ、カジミール・マレーヴィチら、大家の作品がそろっている。
アリスタルフ・レントゥーロフ『赤い家のある風景』(1917年)。