GW2RU
GW2RU

ニコライ1世が歩いたイタリア

フランツ・クルーガー
新エルミタージュ誕生を導いた皇帝の美術旅だった。

 1845年末、シチリア島パレルモにロシア皇帝ニコライ1世と皇后アレクサンドラ・フョードロヴナが到着した。この訪問は外交目的ではなく、文化的関心に基づく私的な旅だった。夫妻はイタリアの芸術と文化遺産を自らの目で確かめるために現地を訪れていた。

 当時、サンクトペテルブルクでは皇帝の美術コレクションを収蔵する「新エルミタージュ美術館」の建設が本格化していた。ニコライ1世はこのプロジェクトを極めて重視し、展示ケースの仕様に至るまで、細部を自ら監督していたという。

 やがて皇帝は「作品そのものも自らの判断で充実させるべきだ」と考え、イタリア各地を巡る美術視察の旅に出る。 旅程にはフィレンツェ、ローマ、ヴェネツィア、ボローニャが含まれていた。 ローマではサン・ピエトロ大聖堂でロシア出身の芸術家たちと面会し、彼らのアトリエを訪問。彫刻家ピーター・スタヴァスールには複数の作品制作を依頼した。 さらにバチカンも訪れ、数十点におよぶ彫刻をロシアへ持ち帰ったほか、ルネサンス絵画の鋳造や模写も発注。 こうして集められた作品群は、1852年に一般公開された新エルミタージュ美術館の展示を飾ることとなった。