人はなぜロシア語を学びに来るのか:プーシキン記念ロシア語大学の教員に話を聞く

プーシキン記念ロシア語大学
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ロシア語は、世界でもっとも求められ、重要な言語の一つに数えられる。世界各国の何万人もの人々が、この言語を学ぶことを選んでいる。では、彼らはどのような人々で、どのような目的をもっているのだろうか。我々は、プーシキン記念ロシア語大学の教員に話を聞いてみた。

 ロシア語を学ぶ理由はさまざまだ。職業上の必要、仕事やキャリアのためという場合もあれば、ロシアの文化や芸術に対する深い個人的関心から学ぶ場合もある。

 エレーナ・クラースニコワは、プーシキン記念ロシア語大学の「外国語としてのロシア語集中教育講座」の上級教員で、30年以上にわたってこの大学で教えてきた。彼女によれば、外国人学習者はおおむね次のようなカテゴリーに分けられる。

1.ロシアで自分のビジネスを始めたい人、ロシア企業または外国企業で働きたい人、あるいはロシア企業のパートナーになりたい人

プーシキン記念ロシア語大学
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 近年、このような学生の数は増えている。どのクラスにも数人は、すでにロシアで働いている人(自力で、あるいは親族や友人とともに)、これから仕事を探そうとしている人、またはロシアで事業を始めようとしている人がいる。

 実業家にとってロシア語は重要だ。個人事業主であれ外国企業であれ、ロシアの企業や国家機関と効果的に協力するために、自社の職員がロシア語を学ぶことを望んでいるからだ。

 ロシア語の運用能力は、ロシアの取引相手と直接に商談を行い、契約を結ぶために必要だ。また、ビジネス倫理の特徴、ビジネス文書のやり取り、ロシアにおける商習慣を理解するためにも欠かせない。さらに、商品やサービスの有望な販売市場に進出するうえでも必要になる。

 このカテゴリーには、中国、トルコ、イラン、ベトナムの学生だけでなく、ヨーロッパやラテンアメリカの人々も含まれる。たとえば、ここ数年だけでも、フランス、スペイン、北マケドニア、ドイツ、ルーマニア、メキシコ、コロンビア、チリ、アルゼンチン、日本、韓国、モンゴルなどから、ロシアで暮らし働きたいと望む学生が来ていた。

2.自国で教育を受けたあと、ロシアの大学への進学を目指す人

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 多くの外国人学生は、ロシアの大学に入学する前に、プーシキン記念ロシア語大学の予備学部で学んでいる。ただし、まず同大学の講座でロシア語を学び、その後に予備学部へ進む人もいる。また、講座修了後に、ロシア語の「B1レベル」の資格試験を受け、それからロシアの大学に進学する人もいる(*ロシア語のB1レベル〈TRKI第1レベル〉は、日常生活でネイティブスピーカーと一定のコミュニケーションがとれる中級レベルであり、必要な語彙数は約2300語)。

 たとえば、私のクラスにいた4人の学生(中国、エクアドル、アゼルバイジャン出身)は、高等教育プログラムに進学し、プーシキン記念ロシア語大学、ロシア諸民族友好大学(旧名パトリス・ルムンバ記念民族友好大学)、モスクワ国立教育大学で学ぶことになった。

3.外交官、国際外交の専門家、大使館で働く軍人、そしてその家族

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 一定期間ロシアに住む外国人の多くは、ロシア語を学び、この国の文化をより深く知ることが必要であり、有益でもあると考えている。プーシキン記念ロシア語大学では、これまでにも、また現在も、ヨーロッパ、アジア、ラテンアメリカ、アフリカ、インド、中東その他の国々の大使館関係者がロシア語を学んでいる。興味深いことに、このような学生たちは、しばしば何年にもわたってロシア語を学び続ける。私たちのクラスには、韓国、ハンガリー、イタリア、ドイツ、トルコ、中国などから来た学生がいた。多くは仕事と勉強を両立させ、学業を終えたあとには同僚や友人を送り込んでくれた。

 つい最近も、以前は軍人で、かつてトルコ大使館で働いていた人が、私たちの講座を訪ねてきた。すでにモスクワでの勤務は終えていたが、ロシア語への愛着が非常に強く、通訳翻訳学部に入学し、今ではロシア語とトルコ語の通訳者になりたいと考えている。

4.外国人研究者、学者、歴史家、文献学者、教育者

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 この人々の目的は、ロシア語のアーカイブ、歴史文書、学術研究にアクセスするためにロシア語を身につけることにある。また、ロシアの学術団体や研究機関と実りある協力関係を築くこと、学位論文を書くこと、専門性を高めること、言語をさらに深く学ぶこと、新しい教育経験を得ることも目的となっている。

5.ロシアを愛する人々、ロシア文学・芸術・音楽・文化の愛好家

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 ロシア文学と芸術は、世界的な名声と評価を得ている。ドストエフスキー、トルストイ、プーシキン、チャイコフスキー、ラフマニノフ、エイゼンシュテイン、タルコフスキーらの愛好者は世界中に何百万人もおり、原文で作品を読み、翻訳なしで映画を見て、作品の芸術的内容や雰囲気をより深く理解したいと願っている。こうした学生たちは、たいてい非常に真剣に、強い意欲をもって学んでいる。

 彼らの主な動機は、文学の傑作を原文で、あるいはそれを最小限易しくしたもので読むことにある。また、意味のニュアンスや感情的な含みを失うことなく、映画、ドラマ、演劇を鑑賞したいとも考えている。さらに、ロシア音楽文化やバレエを深く学びたいという願い、ロシア人のメンタリティや哲学を理解したいという願いも強い。

 だが、ロシアの芸術や文化への愛情だけが学生を引きつけているわけではない。単純にロシアが好きで、自分の目でこの国を見て、ロシアについての真実を知り、よりよく理解したいと考える学習者もいる。あるフランス人の女子学生は、ただ自分のためにロシア語を学ぶため、 定期的にプーシキン記念ロシア語大学に通っている。最近、彼女は生まれて初めて、友人たちとともに舞台でロシア民俗舞踊を踊った。実に見事な出来だった!

6.ロシア国民と結婚した人

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 新しい国で暮らすなかで、これらの人々は、その国の言語を十分に知ることが、普通で快適な生活のために必要だと理解するようになる。多くの人は永住権を取得し、その後にはロシア国籍も得たいと考えている。ほとんどすべての人が、ロシアで仕事を見つけるか、ロシアの大学で学びたいと望んでいる。

 私のクラスにも、このような学生がたくさんいた。出身国は、フランス、トルコ、インドネシア、アメリカ、ブラジル、コロンビア、日本、イラン、オーストラリア、イタリア、ドイツ、キプロス、コロンビアなどさまざまだ。興味深いことに、彼らは家庭内でロシア語を話さないことが多い。ロシア人のパートナーにとって、自分の伴侶が十分に知らない言語で話すのはあまり心地よくないからだ。たとえば、私たちの講座で3年間ロシア語を学んだ日本人学生は、ロシア人の妻が最初の1年間、家では彼に対して英語でしか話してくれなかったとこぼしていた。

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 プーシキン記念ロシア語大学の「外国語としてのロシア語集中教育講座」では、あらゆる習熟度の学習者に向けて、いくつかのコースを提供している。レベルは初級から上級まで、期間は1か月から10か月までだ。入学するには、遅くとも受講開始の2か月前までに、study@pushkin.institute 宛てに申請を送る必要がある。

 プログラムの詳細と受講料については、大学のサイトを参照してほしい。