なぜロシアの大学を選ぶべきなのか:ブランド力、手頃な費用、将来性
リサーチグループのProject Atlasによると、ロシアは留学生数においてはアメリカ、イギリス、オーストラリアに次ぐ多さで、世界有数である。2024年末の時点で、ロシア全域の大学で学ぶ留学生は38万9000人に及んだ。「2030年までの国家開発目標達成に向けた統一計画」の推計では、2025年にこの数字は41万人に達すると予想されている。近い将来的には年2万人ずつ増やし、2030年までに留学生数50万人に到達し得る。
どんな人がロシアの大学を選ぶのか?
ロシアには中国、イラン、インド、エジプト、ラテンアメリカ諸国、CIS諸国など、世界中から学生が学びに来る。4万人強の学生は政府奨学金を受けている。それ以外の学生は一般のロシア人学生と同様に授業料を負担するか、国費で学ぶ。2024年にはロシア最高峰のロモノーソフ記念国立モスクワ大学に2900人の留学生が入学したが、これは過去最高の数字である。現在、同大では計11000人の留学生が学んでいる。
外国からの留学生は、ロシアの大学生全体の8%を占める。彼らは中央連邦管区、特にモスクワの大学を選ぶことが多く、その4分の1以上がモスクワに居住・通学している。他の都市では、サンクト・ペテルブルク、タタルスタン、トムスク、オムスクが選ばれることが多い。中国からの留学生は極東地域を選ぶことが多い。沿ヴォルガ連邦管区は、エジプトからの留学生が多い。
なぜ選ばれるのか
国際的なランキングからも明らかなように、ロシアの大学は学術的な伝統と研究力がよく知られている。例えば、Academic Ranking of World Universities (ARWU)のランキングではロモノーソフ記念国立モスクワ大学が首位となっている。モスクワ大学で学ぶ学生の29%は外国からの留学生からであり、同大は物理学と数学の分野で世界のトップ100にランクインしている。同ランキングには、他にもロシアの6つの大学が名を連ねている。
- 国立サンクト・ペテルブルク大学(学生の19.3%が留学生)
- モスクワ物理工科大学(同15%)
- ウラル連邦大学(同17.7%)
- 高等経済学院(同12.1%)
- 国立ノヴォシビルスク大学(同22.5%)
- スコルコヴォ科学技術大学
World University Rankings2024では、やはり国立モスクワ大学が95位にランクイン。さらに、物理科学、経済学とビジネス分野では62位につけている。
何が選ばれるのか
ロシアの教育機関は幅広い分野をカバーし、700以上の大学と650以上の教育プログラムが存在する。中でも人気なのは、数学、物理学、化学、工学、IT、医学といった分野だ。教育・科学省によると、2024年には約9万人の留学生が技術系の分野を選択している。
ロシア連邦交流庁は2025/26年度、ロシア連邦政府の定める割当の範囲で177か国から留学生を募集した。出願数は7万8000以上だった。同庁によると、特に人気のあったプログラムは「一般医学」、「歯科学」、「看護学」、「経済学」、「情報およびコンピューターサイエンス」、「国際関係」などである。
授業料
ロシアの大学の授業料は依然として手頃なままである。最低限必要とされる授業料は年間10万5000ルーブル(約21万円)だが、最終的な金額は地域や選択するプログラムに左右される。
以下は、人気の高い大学とプログラムの例である:
大学名 | プログラム | 1年間の授業料 |
国立サンクト・ペテルブルク大学 | ビッグデータおよび分散型デジタルプラットフォーム | 36万8000ルーブル(約73万3000円) |
国立モスクワ大学 | 基礎コンピューターサイエンスおよびIT | 44万9960ルーブル(約89万6600円) |
ロバチェフスキー記念国立ニジニ・ノヴゴロド大学 | 基礎コンピューターサイエンスおよびIT | 19万5000ルーブル(約38万8000円) |
奨学金制度あり
留学生にはロシア政府による国費負担の割当枠がある。割当枠は4万。この枠を獲得するには、まずeducation-in-russia.comでオンライン申請を行い、希望する大学と専攻分野を選択し、リモートで選考試験を受ける必要がある。
留学生は、奨学金にも応募できる。奨学金は、例えば、学問分野の国際科学オリンピックの勝者や出場者に提供される。そうしたプログラムの1つが、Open Doors: Russian Scholarship Projectである。
I.N.ウリヤノフ記念国立ウリヤノフスク教育大学が毎年主催している国際科学オリンピックVolga Universeでは6科目(ロシア語、社会科学、数学、英語、数学、生物学)が競われる。この大会の勝者と入賞者は、入学時に有利となる資格証書を授与される。
ブラジルでは、中等教育の生徒を対象として化学分野の「メンデレーエフ国際オリンピック」が開催されている。2025年には40か国から代表が参加した。
2025年にロシア教育・科学省は総額11億ルーブルを越える奨学金を留学生2000人に支給した。この奨学金で、ロシアへの往復渡航費と、寮費、保険料がカバーされる。ヴァレリー・ファリコフ教育大臣によると、留学生には日々の生活費を補うための費用も毎月支払われるようになるとのことだ。
学位の相互承認、およびダブル・ディグリー
ロシアは多くの国々と、学位の相互承認に関する協定を結んでいる。アルバニア、ハンガリー、ベネズエラ、ベトナム、キプロス、モンゴル、南アフリカなどだ。これらの国で取得した学士号、専門学位、修士号は、学業の継続や就業時に有効となる。この協定がどの国と結ばれているかは、ロシア資格認定機関で確認できる。資格認定のための書類を提出する場合は、こちら。このサービスは英語、ドイツ、フランス語、スペイン語、中国語、アラビア語に対応している。
一部の大学では、外国の大学との連携の一環としてダブル・ディグリーを実施している。例えば高等経済学院では、慶熙大学校と共同で学士課程「アジアの政治経済」を実施している。学生は3年時から東アジアおよび東南アジア、そして慶熙大学校で学ぶことができる。プレハーノフ記念ロシア経済大学は中国の江蘇省教育学院との提携で「国際ビジネス」プログラム、ザグレブ経済経営大学との提携で学士課程を実施している。
ロシアで学びながら交換留学プログラムに参加してさらにもう1か国で学ぶことも可能だ。例えば、高等経済学院は日本、ブラジル、ハンガリー、ベトナム、イタリア、インド、イスラエル、メキシコ、中国、マレーシア、韓国、オマーン、モロッコのの大学と協定を結んでいる。交換留学プログラムに参加するには、ウェブサイトから選考に申請する必要がある。
ロシア語をマスターできる
多くの大学では、外国人留学生向けにロシア語コースを設けている。例えば、国立モスクワ教育大学言語学研究所やRUDN(ロシア民族友好大学)など幾つかの大学では、入学前準備として外国人向けのロシア語研修センターを設けている。
教育・科学省によると、留学生全体の10%は就労のためにその後もロシアに残る。「戦略的イニシアティブ機関」の調査によると、現在、留学生の45%(回答者3300人のうち半数近く)が、卒業後もロシアで生活することを検討しているという。
ロシアで就業するための最短コースは、学んでいた大学に就職することだ。このようなプログラムは高等経済学院、国立モスクワ大学など、複数の大学で実施されている。
モスクワには、就職やインターンシップ探しを支援する専用のプラットフォームStart in Moscowがあり、現在、80社が提携している。Start in Moscowによると、最も需要が高いのはビジネスアナリスト、データアナリスト、ITスペシャリスト、エンジニアである。
対象となる専門分野は多岐にわたり、例外的に需要が無いのは会計、公務員、ロシアの安全保障関連の分野のみである。