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ラマ湖: 願いを叶えてくれる湖 (写真特集)
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「ラマ湖が願いを叶えてくれるのは本当だけど、やり方は独特だよ」
と、案内人のユーリーさんが警告した。曰く、
「ボートで遊覧を楽しんでいた、とある観光客グループが、湖をもっと遊覧したいと口にした。すると風が起こり、岸に霧が立ち込めた。結局このグループはその後、宿舎に戻るまで2時間ほど湖上で待機することになった」
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クラスノヤルスク地方の北方、ノリリスク市の住人にとって、ラマ湖は「地元の湖」だ。極圏のノリリスクからラマ湖までは120km、水路で4時間ほどかかる。踏破困難なプトラナ台地を目指す人々は、ノリリスクをスタート地点とする。
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プトラナ台地には無数の山や湖や滝があるが、ラマ湖は美しい景観と高い透明度に加え、そのミステリアスな雰囲気で人々を魅了し、ロマンティストたちを惹き付けてきた。
古代文明の痕跡
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エヴェンキ語で「ラマ」は「大きな水」を意味する。確かに、大きな水だ。ボートで移動中、音響測深機は深さ200m以上を示し、所々に急峻な谷間も観測した。もっとも、その深さについては科学的に未解明な部分が多い。1年の大半を氷に閉ざされ、6月末頃にようやく水面が現れる湖を調査するのは、並大抵ではない。そもそもこの湖が地図上に記録されたのは、ようやく1921年になってからだ。
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ラマ湖周辺には、集落も道路も無い。先住民とされるのは、エヴェンキ人、ドルガン人、ガナサン人である。ラマ湖の東端は太古から特別な力のある場所とされ、エヴェンキの木製の偶像が発見されている他、言い伝えによると、1930年代末まで、エヴェンキの最後の女シャーマンが暮らしていたという。かつては、また別の民族が暮らしていたらしいが、彼らについては殆ど何も分かっていない。
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ソ連の考古学者レオニード・フロブィスチンは1970年代半ば、現地の河川や湖のほとりを数回にわたり調査した。その結果、3000~4000年前のプトラナ台地には人が住んでいた事が分かった。
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しかも、その人々は最古の合金である青銅製の品を使っていた。また、包丁の破片や精錬用の容器、銅板なども発見された。北極圏で発見された最古の銅製品はまさにプトラナ台地のもので、紀元前18世紀のものとされる。
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銅を分析した結果、この地の職人たちはノリリスク鉱床から産出した自然銅を使っていたことが分かったが、合金の製造には他に鉛、ビスマス、アンチモンが必要だ。これらはどう採取したのだろうか?実は、これらの素材はシベリアの他の地域からもたらされたようだ。つまり、遠方の銅職人とコンタクトがあった、ということである。だが、なぜこの地域が無人になったのかは、未だ謎のままだ。
パワースポット
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現在、この地には観光用宿舎「ブニシャク」があるが、これは単なる宿泊施設ではない。創立者のオレグ・クラシェフスキー氏は50年にわたり、北方民族の古い衣裳や古民具、祭祀用の品々などを収集するコレクターだ。
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かつてフロブィスチンの調査行に同行したクラシェフスキー氏は、フロブィスチン博士は異文明の痕跡を発見したと考えている。現在もプトラナ台地の最深部まで可能な限り探索している。この地を彼より良く知る人物は殆どいないだろう。
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「我々はここで多数の古代の廃墟や、巨石建造物の基礎、加工した土塊を発見しました。かつて、ここは活気に満ちていたのです」
と、クラシェフスキー氏は語る。
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彼の専門は考古学と狩猟学で、かつては極地農業研究所に長年勤め、プトラナの自然保護区認定を提唱した1人だった。16の学術論文と3つのモノグラフを書いている。ガナサン人たちはクラシェフスキー氏を自分たちの「白いシャーマン」と呼ぶ。
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「私が持っているこの魔除けは、ガナサンのシャーマンの印で、非常に古いものです。とある部族の女系の族長が、私が彼女の腕を治療した御礼に、他の品々と一緒にくれた物です」
と、クラシェフスキー氏は語る。「信じるか信じないかは読者次第だが、我々がラマ湖の複数の宿舎を訪ね歩いたこの1日で、蚊やアブに刺されなかったのは、彼の宿舎だけだったのだ。私が話をつけておきましたからね」
とは、クラシェフスキー氏談。
滝の近くの出会い
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私たちは案内人のユーリーさんとともにネララフの滝に向かった。滝の轟音は遠くからでもよく聴こえるが、近くに寄るには急な勾配を200mほど越えなければならない。
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足元の岩は生きているかのようにグラグラと動き、今にも崩れそうだ。必ず苔の生えた岩の上を歩くよう、ユーリーさんが忠告する。そうした岩の方が安定しているのだ。彼はいかなる神秘も信じず、万事に科学的根拠を見出している。
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「これほど多くの虹は、この地以外では見た事が無い。このひと月ほどは、毎日虹を見た。1つの虹は直立し、もう1つは弧を描き、3つ目の虹は直線だった」。
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この現象を、ユーリーさんは次のように説明する。岸のあたりに露出している鉱物が磁場を不安定化させ、水面では激しい気温差により大気の状態が変化する、というのだ。
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確かに、非常にパワーを感じる場所だ。ユーリーさんいわく、
「人々はこの場所でエネルギーの高まりを感じる。北方の民族にとってこの場所は神聖で、願い事を祈願する人も多い」
とのことである。
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我々は天候に恵まれた。直前までラマ湖周辺では雷雨で、我々の日程もキャンセル寸前だったが、当日は暖かく、空は晴れ、湖は理想的に凪いでいた。
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夕刻には驚くほど美しい夕陽が鏡のような湖面に映り、その後は非常に濃い霧が立ち込めて、ノリリスクの近くまで晴れなかった。
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道中、現地の観光地としてのポテンシャルを話し合っている最中、私は遠い異国からラマ湖にやってきた人の意見も訊いてみたいものだ、と言った。
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すると、何という偶然か。息も絶え絶えになりながら岩の上を歩いていると、釣り人の一団に遭遇した。そしてその中の1人ヴラジーミルさんは、なんと遠くニュージーランドから来ていたのだ!彼はロシア生まれだが、もう長いことニュージーランドで暮らしており、ラマ湖に来たのは初めてだと言う。自分の望みがあまりに早く叶ったのに驚いていると、私たちのクルーを率いていたコンスタンチン・ヴィクトロヴィチは言った。
「言った通りだろう?」
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