
ロシアの夏を彩る「シダの花伝説」、その不思議な魅力とは?

毎年7月7日、多くのスラヴ民族が、夏至の民俗祭「イワン・クパーラ祭」を祝う。この祭りは、夏の自然の力や火・水といった元素、そして花々を讃える行事として古くから親しまれてきた。
この日には、火の輪を跳び越え、川に花輪を流し、朝露で身体を清めるなど、多くの伝統的な風習が見られる。そして、祭りの象徴的な儀式のひとつが「シダの花探し」だ。

本来、シダは花を咲かせない植物だ。しかし伝説では、「魔法のシダ」は真夜中、赤く燃えるような小さな花を咲かせるという。ゴーゴリの短編小説『イワン・クパーラの夜』には、こう描写されている。
「赤い小さなつぼみが脈打つように動き出し、燃える炭のような輝きを放ちながら、静かな音とともに花開いた。まるで夜空の星が地上に舞い降りたようだった」
見つけた者には試練が待つ。伝承によれば、もしも幸運にもその花を見つけたならば、手のひらを傷つけて血を流し、花を皮膚の下に隠さなければならない。そして、決して振り返らずに森から逃げること――。なぜなら、その瞬間から森の悪霊たちが後を追いかけ、逃げる者を脅かそうとするからだという。

すべての試練を乗り越えた者は、花の持つ不思議な力で「財宝の在り処」や「森の精霊との対話」が可能になり、知恵や富を得られると信じられてきた。しかし、ゴーゴリの物語では、花を手にした青年ペトロが得たのは幸福ではなく、深い悲しみだった。