
現在まで続く、ロシアの7つの婚礼の伝統

ロシアでは、結婚は単に若い2人のお祝いというだけでなく、親族にとっても公的な祝祭の面を持つ。近年では一風変わった場所(地下鉄駅やプラネタリウムなど)で婚姻登録をするという流行もあるが、近親者との祝いの席は古くからの伝統に基づいて行われる。とはいえ、やはり古来の習俗とはかなり異なってきている。
1.「花嫁の買い取り」

最も良く知られる伝統の1つ。花婿が友人たちと花嫁の家に到着すると、花嫁側の友人・親族らが行く手を阻み、花嫁の「買い取り」を要求する。スラブでは通常、花嫁の「買い取り」は金銭ではなく、通常は、何らかの課題をクリアするという形だった。例えば謎掛けを解いたり、身体能力を披露するなどした。
現代の結婚式では、「買い取り」は花嫁の家の近くで求められる事が多い。花嫁側友人たちに贈るスパークリングワイン、花嫁の持ち物を当てるクイズ、窓の下で花嫁のために歌を披露する、などといったパターンが一般的だ。
2.「ウェディング列車」

古くは、花婿が友人たちと連れ立って花嫁を迎えに来る行列をこう呼んだ。「列車」に参加する者は赤いシャツか赤いリボン、あるいは赤いスカーフを身に着けた。この行列の中心は「ドルシュカ」、すなわち花婿の近しい友人、取り仕切り役、介添人であった。
現在では行列の代わりに自動車で乗り付けるが、役割は同じである。
3.婚礼人形

新郎新婦の乗る車は、フロントバンパーにウェディングドレスを着せた人形を飾るという習慣がある。人形は多くの場合、花嫁が子供の頃に遊んだ品だ。この習慣も古い伝統に基づいている。かつては新郎新婦の馬車に布製の人形を吊るし、魔除けのお守りとした。スラブ人は古くから、嫉妬する者の悪しきエネルギーを人形が吸収してくれると信じていた。
4.タマダー

古くは、花婿の友人が客を楽しませ、また、慣習が遵守されているかを監視する役割を担っていた。一方ソ連時代には、レストランで結婚式を執り行って、その際に司会者を雇うという伝統が生まれた。これを背景に人気を獲得していったのがコーカサス料理店で、ジョージア語の「タマダー(宴会の幹事)」という言葉がロシア語に定着した。結婚式のタマダーは何度も乾杯の音頭を取り、余興として各種コンテストを行うなど、客を退屈させないために手を尽くす。
5.結婚式用のカラヴァイ

大きな丸型パンのカラヴァイは、ロシアではおもてなしと家族的価値観の象徴である。結婚式では親が新郎新婦にカラヴァイを贈り、2人の仲を祝福した。そして新郎新婦はカラヴァイを一切れずつちぎって食べる。より大きな一切れをちぎった方が家庭で主導権を握るというジンクスは、現在でもよく耳にする。
6.「ゴーリカ!」コール

客人たちが「ゴーリカ(苦い)!」とコールを始めたら、新郎新婦はキスをしなければならない。さらに客人たちは、2人のキスが何秒続くか、大声で数える(長ければ長いほど良いとされる)。言語学者によると、この言葉は古くは「ゴレーチ(燃える、光る)」と共通の語根を有していたが、現在では、アルコールの「苦み」を2人のキスで甘くするという意味合いに変わったという。
7.グラスを割る

ロシアの村では、結婚式で粘土製の壺を割る習慣があった。現在では、幸運を呼ぶためにグラスを叩きつける。破片が多いほど、幸福な結婚になるという。また、割れる音は悪霊を追い払うともいう。