ロシアの奇妙な9つの迷信

キラ・リシツカヤ(写真:Deagreez, ysbrandcosijn, Anna Rudnitskaya/Getty Images)
キラ・リシツカヤ(写真:Deagreez, ysbrandcosijn, Anna Rudnitskaya/Getty Images)
旅の前に座り込む、敷居をまたいで話してはならない、足を踏まれたら踏み返す・・・など、ロシア人の多くは先祖たちが信じて来た迷信を今も伝統として受け継いでいる。こうした迷信の由来や、決まり事を破った時の対処法はどんなものがあるのだろうか?

1.旅の前に腰かける

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 これから旅に出る場合は、出発前にしばらく座り込み、黙ってこれからの旅のことを考える。

 この迷信の起源はかなり古い。悪霊が旅人に不幸をもたらすと考えられたので、人々はこのようにして、まるでどこにも出発する気などないかのように振る舞って、悪霊を騙した。また、座ってる間に持って行く荷物を数え上げた。かまどを守るドモヴォーイ(家の精霊)が心配しないように、と言う配慮である。

 この決まり事を守らなかった場合、旅のために乗る乗り物の座席の下にコインを置くと良いとされた。

2.髪の毛を捨てず、水に流す

 長いお下げ髪の女性たちは、クシに残った髪の毛をゴミ箱に捨ててはいけない、と祖母に教わったかもしれない。そうした髪は燃やすか、川に流す(現在では、トイレに流す)と教えられた。

 昔の人々は、髪の毛は生命力の源であり、持ち主とのつながりであると信じていた。もし髪の毛が悪い人間の手に渡ると、その悪意によって害が及ぶと危惧された。それどころか、鳥がくわえて巣に持っていっても、その髪の毛の主は頭痛に悩まされると言う。一方、水はあらゆるネガティブなものを持ち去っていくとされた。

 この決まり事を守らなかった場合:顔を洗えば良い。

3.客が帰った後に床を洗わない

 客人が帰った後、彼らが自分の家に着くまで、床は洗わないほうがよい。洗ってしまうと、その客人達を自分の運命から「洗い流して」しまい、永久に彼らと関係が悪くなる、とされた。

 この決まり事を守らなかった場合:客人たちに電話して、無事に帰宅したことを確認する。こうして彼らとのつながりが「回復した」ことになる。

4.テーブルの角に着席しない

 テーブルの角の席に座った乙女は、嫁にいけなくなるとされた。この迷信は、若者同士をもっと「交流の多い場所に」配置して、彼らが知り合う可能性を高めるための作戦と言う側面もあった。

 この決まり事を守らなかった場合:「夫/妻にも自分の角(家)がありますように」と言う。

5.日没後にゴミを捨てに行かない

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 暗い時間帯は善なる精霊はお休みで、各種悪霊が活発になる。したがって、こんな時間帯にゴミを捨てに行くと、ゴミと一緒に財産の安定も捨ててしまうリスクがある。もちろんこの迷信には、暗く危険な時間帯に出歩かないようにするという、電灯の無かった時代の実際的な意図もあった。

 この決まり事を守らなかった場合:持ち出しているのは不要なものだけ、と唱える。

6.家を出てすぐに戻らない

 家を出てからすぐ戻るのは不吉なこと。人が自分の旅路を中止し、物事の自然な配列を乱すことで、良からぬことを招くとされたのである。

 この決まり事を守らなかった場合:家の中に戻ったら、鏡を見て微笑む。あるいはせめて、出発前に少し腰かける。

7.敷居をまたいで話さない

 古代よりスラブの信仰では、家の敷居は世界の境目であった。そこには精霊が住まい、その境界線を侵してはならなかった。敷居をまたいで話をすることも、物を手渡すこともしない。

 この決まり事を守らなかった場合:敷居をまたいで、相手と同じ側に移動する。

8.街なかで小銭等を拾わない

 街なかで拾った硬貨あるいは何らかの品は、特にそれが十字路に落ちていた場合、不幸をもたらすことがあるとされた。「小銭は涙である」、とも言われた。道端にコインが落ちているのは、不幸から逃れるためにわざと小銭を落とし、それを拾った者に不幸を移すためだと、ロシアでは信じられていた。十字路もまた、世界の境界を示す象徴であった。

 この決まり事を守らなかった場合:拾い上げる時に、「コインを拾うが、不幸は拾わない」と唱える。

9.足を踏まれたら、踏み返す

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 足を踏まれたら、軽く踏み返す。右足を踏まれたら相手の右足、左足なら相手の左足を軽く踏む。このような身体的コンタクトによって、災いやネガティブなエネルギーが伝わってしまうと考えられた。踏み返しは「返す」儀式であり、争いごとや災いが自分に残らず、もとの持ち主に戻っていくためのものだった。

 この決まり事を守らなかった場合:踏み返しが間に合わなかった場合、「チュル・メニャー(悪魔除けの言葉)」と頭の中で唱えるか、災いが去るように、木を叩く。

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