無人の北極諸島を記録したヤクーツク出身の写真家(写真特集)
ヤクーツク出身の写真家アンドレイ・ニキフォロフ氏は、2025年8月、ロシア北極圏のメドヴェジー(クマ)諸島で1カ月間の撮影を行った。そこは、1000年前のエスキモーの住居跡が、放棄されたソ連時代の極地基地とホッキョクグマの生息地と並んで存在する、まさに「世界の果て」とも呼べる場所だ。
世界の果てへの旅
メドヴェジー諸島は、北極海の東シベリア海に浮かぶ6つの小島からなる。現在は無人だが、ソ連時代には極地研究の拠点が置かれていた。
基地は1990年代半ばに閉鎖され、いまも当時の建物や錆びた機材が残る。
「ヤクーツクからチェルスキーまでは飛行機で約4時間。そこから船で10時間ほどかけて島へ向かいました。天候が安定するまで、さらに4日間待たなければなりませんでした」とニキフォロフ氏は振り返る。
古代エスキモーと極地探検家の痕跡
同行したのは考古学者2名と保護区職員1名。調査チームはチェティリョフストロボヴィ島でエスキモーの遺跡を発掘した。
発見された銛の一部は、8世紀から11世紀にかけてのものと推定されている。
なぜ人々はこの地を離れたのか。その理由はいまだ明らかではないが、気候の寒冷化が一因と考えられている。当時、この地域は現在よりも温暖で、生活に適していたとみられている。
島々には古代の狩猟民だけでなく、ソ連時代の極地探検家たちの痕跡も残る。錆びた燃料ドラムや凍りついた設備は、過ぎ去った時代の記憶を静かに語りかける。
北極の覇者たちとの出会い
現在、この諸島はホッキョクグマ保護区として指定されている。クマたちは氷原と岩場が入り混じる海岸線を好み、巣作りを行う。
「朝、かつての北極基地の建物でコーヒーを飲んでいたとき、窓の外に子グマが見えました。その後ろには体長2メートルほどの母グマが現れたんです」と写真家は語る。
「慌ててカメラを取りに走り、撮影を始めました。」
彼によれば、現地でクマを見かけたのはこのときと、もう一度遠くから見たときの二度だけだったという。通常、この季節の島々では多くのクマが観察されるため、保護区の職員たちもその少なさに驚いていたという。