子どもたちのヒーロー「スチョーパおじさん」:ソ連の正義を象徴した警察官像

Ekaterina Chesnokova / Sputnik
Ekaterina Chesnokova / Sputnik
「スチョーパおじさん」は、ソ連の子どもたちに正義と勇気を伝えた警察官の物語だ。ソ連国歌およびロシア国歌の作詞者である、当時22歳の若き詩人セルゲイ・ミハルコフが、実在の警察官をモデルに創作した作品は、当時の社会に大きな影響を与え、今も語り継がれている。その背景と魅力を5つのポイントで紹介しよう。

1/ 子どもたちのヒーロー、スチョーパおじさん

国立文学博物館
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「スチョーパおじさん」は、実在した警察官ステパン・ステパノフをモデルに、詩人セルゲイ・ミハルコフが描いた児童詩である。ミハルコフがまだ22歳の若さで、児童キャンプのカウンセラーを務めていた際に着想を得た。

 彼は、子どもたちの模範となる正義と勇気の象徴を創り出すことを目指し、先達と意見を交わしながら作品を完成させた。この詩はソ連の児童文学を代表する作品の一つとして、現在に至るまで広く親しまれている。

2/ 作品とともに育った世代

国立文学博物館
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 ミハルコフはスチョーパおじさんの生涯を4編の詩にまとめた。タイトルは「スチョーパおじさん」「スチョーパおじさん 警官」「スチョーパおじさんとエゴール」「スチョーパおじさん ベテラン」。最初の作品は1935年に発表され、最後は1981年だった。

Ivan Aksenchyuk / ソユーズムリトフィルム, 1964
Ivan Aksenchyuk / ソユーズムリトフィルム, 1964

 この物語は当時の子どもたちに広く愛され、ソ連の多くの世代にとって心の中の英雄となった。

3/ 特徴は長身の姿

 詩の中のスチョーパおじさんは長身であることが大きな特徴だ。「仕事帰りに歩く姿は1マイル(約1.6キロ)先からでも見えた」と描かれている。なお、作者のミハルコフも約190㌢の長身だった。

 また、主人公はミハルコフ自身の人生を反映しており、さまざまな職を経験しながら大祖国戦争にも参加し、やがて職業と家庭の幸せを手に入れた。

4/ 国歌の作者でもあるミハルコフ

国立文学博物
国立文学博物

 ミハルコフはこの詩で初めてレーニン勲章を受賞し、その後も複数の勲章や国家の栄誉を受けている。児童詩や童話のほか、戯曲や映画の脚本も手掛けた。彼の息子たちも映画監督として名を馳せている。

国立文学博物
国立文学博物

 なかでも、ミハルコフはソ連と現代ロシアの国歌の歌詞を作詞したことで知られ、国民的な存在になった。

5/ 有名児童画家による挿絵で広まる

児童文学出版社、1936年
児童文学出版社、1936年

 最初に詩が雑誌『ピオネール』に掲載され、挿絵がなかったが、編集長のベンヤミン・イヴァンテルはこの作品を気に入り、挿絵なしで掲載した。

 その後1年を経て、画家アミナダフ・カネフスキーによる挿絵付きで単行本が出版された。多くの子どもたちはこの挿絵を通じてスチョーパおじさんの姿を覚えている。カネフスキーはまた、児童画誌の人気キャラクター「ムルジルカ」の作者でもある。

児童文学出版社、1936年
児童文学出版社、1936年

「ロシア・ナビ」は本記事の資料提供に協力した国立文学博物館に感謝の意を表す。

6月5日から、博物館センター「ズボフスキー15番地」で、「背の高い市民:スチョーパおじさん90歳!」展が開催される。

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