ロシアの物語世界のモンスターといえば?

OpenAI による作成
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ズメイ・ゴルィニチは物語に登場する中でも特に存在感があり、かつ危険なモンスターだ。

 ズメイ・ゴルィニチはよく知られた、印象深い怪物だ。第1に、頭が多い。首が3本、6本、9本、12本というパターンが多いが、5本や7本という物語も散見される。第2に、空を飛ぶ。ただし、その翼が飛行に使われているような描写は殆ど見られない。どうやら、翼が無くても飛べるようだ。

 第3に、火を使う。「凶悪なズメイが業火で死をもたらす」と、物語では語られる。あるいは、「ズメイの火と、切り裂く爪」とも書かれる。だが、この火がどのように出てくるのか、物語には描写されていない。ズメイが口から火を吐く様子は、ルボーク版画や、より後の時代のイラストで表現されるようになる。

 その体躯も、物語では描写されていない。その体表が鱗なのか、滑らかなのかは不明。爪のある脚も、言及されることは稀だ。ルボーク版画では先端の尖った長い尾が頻繁に描かれたが、これも、物語では描写されていない。こうしたディティールの欠如から察するに、どうやら物語の語り手にとっても伝説の怪物の姿はあやふやだったのだろう。

 ズメイの中には、水と関連するものもあった:「突然ズメイが出てきて、溢れた水は3アルシンほどまで流れ出した」。また、民俗学者ヴラジーミル・プロップは、ズメイの「ゴルィニチ」という異名は、山(ゴラー)に由来するとしている。

 さて、物語のズメイ・ゴルィニチの活躍ぶりはいかがだろうか。まさしく、カオスと悪と被害の具現化とも言うべき存在である。まず、女をさらう。それも突然、電光石火にさらっていく。さらに、町の住人たちを脅し、嫁もしくは食うための貢ぎ物の女を差し出すよう、強要する。また、ズメイは異界との境を守る存在でもある。この場合、ズメイは火の川「スモロディナ川」と、「カリノフ橋」を守護しているとされる。そしてカリノフ橋は、ズメイ・ゴルィニチを殺さぬ限り渡れない。

 ズメイ・ゴルィニチに勝つには、その首を全て落とさなければならない。それも、一気にすべて落とさないと、首は再生してしまう:

「怪物チュダ・ユダの9つの首を斬ったが、チュダ・ユダは首を拾い集めると、燃える指でひと叩き、たちまち首は元通りに繋がった」。

 燃える指を切り落として初めて、勇者は全ての首を切って勝利を収める。通常、ズメイと勇者は3度戦い、最後の3度目が最も激しいバトルとなる。もちろん、最後に勝利するのは勇者である。戦いの後の後始末も大事だ。ズメイの頭部は全て焼き尽くし、胴体は「火の川に投げ込む」必要がある。ここまでやれば、めでたしめでたしだ。