オジー・オズボーンのソ連・ロシア訪問記
ブラック・サバスの創設者オジー・オズボーンは、1989年に初めてソ連(当時)を訪問。モスクワ・ルジニキ・スタジアムで開催された「モスクワ・ミュージック・ピース・フェスティバル」に出演した。その非公式なテーマは「ロック・アゲインスト・ドラッグス」。スキッド・ロウ、モトリー・クルー、ボン・ジョヴィ、スコーピオンズらとともに、ソ連のロックファンを熱狂させた。
当時のオジーは「フェスティバルの趣旨とは相いれなかった」と言われるほど酒に酔っていたとされ、会場の警備員が彼を酔っぱらった配管工と間違えて取り押さえそうになったという逸話も残っている。
「本当に輝かしい出来事で、私にとって忘れがたい体験でした。ロシアを訪れたのはあの時が初めてで、まさかあれほど多くの人が私のことを知っているとは思っていませんでした。誰も僕のことなんて知らないだろうと思っていたんです。ところが突然、『オジー大好き』と手書きのポスターを掲げるファンが現れて…本当に感動しました」。オジー・オズボーン、後年のインタビューより。
その後も彼は何度もモスクワやサンクトペテルブルクを訪れ、大規模な会場でソロコンサートを開催。2018年には、バンド結成50周年を記念したフェアウェル・ワールドツアーの一環としてロシア公演を行った。
かつてはハトやコウモリの頭を噛みちぎるという過激なパフォーマンスで観客を驚かせたオジー・オズボーン。しかし晩年の彼は、すっかり健康志向のライフスタイルを貫いていた。「毎日運動しています。タバコも酒もドラッグもやりません。それが今の私の健康の理由だと思います。それに、いつも好きなことをやっています。ステージで演奏して、人々に喜びを与えるのが好きなんです。ステージは私にとって第二の故郷なんです。」
彼はロシアへの熱烈な愛をたびたび語っていた。「ロシアが大好きで、必ずまた来ます。また皆さんの前で演奏できることを嬉しく思います。<…> これは私の最後のワールドツアーです。もうワールドツアーには行きません。でも、演奏し、コンサートは続けます。音楽から離れることはできません。音楽は私の人生そのものなのですから」。そう語った彼の言葉は、多くのロシアのファンの胸に深く刻まれている。ロシアの観客もその思いに応え、親しみと敬意を込めて、彼を「オジック(Оззик)」と呼んでいた。
モスクワでは、彼の功績を称えて「ウォーク・オブ・フェイム」に星が設置され、2018年5月31日に彼自身が除幕式に出席した。