ソ連の代表的アール・デコ建築10選

ロシア・ナビ(写真:パブリックドメイン)
ロシア・ナビ(写真:パブリックドメイン)
丁度100年前、パリで現代産業装飾芸術国際博覧会が開催された。そこで新たなデザインの潮流アール・デコが生まれ、世界中で流行する。ソ連も例外ではなかった。

1.V.I.レーニン記念国立図書館、モスクワ

エマニュイル・エフゼリキン / TASS
エマニュイル・エフゼリキン / TASS

 1920年代末、レーニン図書館の新館のコンペで建築家ゲリフレイフとシューコの案が選ばれた。2人は他にも国内で幾つかのアール・デコ調の建築を残している。国立図書館の建築はモニュメンタリズム的な要素が強いほか、鉄筋コンクリートの円柱、ポルチコの浅浮彫り、屋根をほぼ一周する人物像など、ネオクラシック調のかなり控え目な装飾が特徴。

2.国家院、モスクワ

ナウム・グラノフスキー / TASS
ナウム・グラノフスキー / TASS

 労働国防委員会による使用を想定された建物の建設は1930年代に構成主義の建築家アルカージー・ラングマンに委ねられた。ラングマンはすでに、当時国内最大のスタジアムだったディナモ・スタジアムの建設で名を挙げていた。灰色の石灰岩のファサード、シンプルな付柱、そして装飾をほぼ排除したことは、他の建築家たちを困惑させた(彼らは、図面を逆さにして建設しても誰も気付かない、と冗談を言っていた)。だがこの建築は、現在でも古さを感じさせない。 

3.河岸通りのアパート、モスクワ

ニコライ・クベエフ / TASS
ニコライ・クベエフ / TASS

 1920~30年代にかけて建設された、ソ連のエリート用住宅。設計者した建築家ボリス・イオファンは、アメリカでアール・デコ建築を研究していた。構成主義の後期の特徴も見られる建築だが、新しい様式に則った機能性の方が優位になっている。

4.スターリン様式ビル、モスクワ

ニコライ・マリシェフ / TASS
ニコライ・マリシェフ / TASS

 第二次世界大戦後に建設された高層ビル群は、スターリン・アンピール様式に分類されるのが一般的である。しかし、シルエットこそ共通しているものの、デザインはそれぞれ異なり、アール・デコの主だった特徴も併せ持つ。特に国立モスクワ大学の本館や、外務省の建物にその傾向が顕著だ。

5.南ウラル国立大学、チェリャビンスク

ウラジーミル・フェドレンコ / Sputnik
ウラジーミル・フェドレンコ / Sputnik

 1950年代にチェリャビンスクに建設された工業大学の建物は、国立モスクワ大学のスタイルにならったものである。フルシチョフ時代の「過剰装飾」排除にともなって建設計画からは余分な装飾が廃され、よりシンプルなアール・デコ調の建物が完成した。

6.100号室住宅、ノヴォシビルスク

m-nsk.ru
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 シベリアの党幹部用住宅で、設計はヴィタリー・マスレンニコフとアンドレイ・クリャチコフ。2人はフランスの建築家オーギュスト・ペレの建築に影響を受けたとされ、1937年のパリ万博で彼らの設計案はグランプリを受賞している。

7.1937年パリ万博のソ連パビリオン

パブリックドメイン
パブリックドメイン

 ソ連パリビオンの目玉はヴェラ・ムーヒナの手による「労働者とコルホーズの女性像」だったが、建築に関してはボリス・イオファンが担当した。連続する水平な張出しは直角部分もあいまって上部の人物像をよく引き立て、空高く伸びていくような印象を抱かせるが、これはソ連の思想を象徴するものでもあった。

8.モスクワ地下鉄の駅

MAMM/MDF
MAMM/MDF

 モスクワ地下鉄の最初の区間の開業は1935年。最初の数駅の内装も、大理石の支柱、シンプルなラインなど、アール・デコ調の特徴が目立つものが多い。特にパルク・クリトゥールイ駅、クロポトキンスカヤ駅、ソコリニキ駅にそうした傾向が見られる。1939年のニューヨーク万博でグランプリを受賞したマヤコフスカヤ駅(1938年開業)は、金属製の円柱・アーチと大理石の外装材の組み合わせが優美で、アール・デコスタイルの代表的な作例とされる。

9.ドーム・ソヴェートフ、サンクトペテルブルク

ニコライ・ナウメンコフ / TASS
ニコライ・ナウメンコフ / TASS

 現在はビジネスセンターが入居しているが、かつてはレニングラードの行政の中心だった。折衷主義スタイルの建築だが、スターリン様式に繋がる派手な装飾が随所に見られるようになっている(最も、スターリン様式は戦後の建築に多いとされる)。ノイ・トロツキーが率いた建築家集団による作品で、ノイ・トロツキー自身はそれまでレニングラードの新興地区で住宅の設計などを手掛けてきていた。

10.D.D.ショスタコーヴィチ記念オペラ・バレエ・アカデミー劇場、サマーラ

エフゲニー・チハノフ / Sputnik
エフゲニー・チハノフ / Sputnik

 こちらもノイ・トロツキーの作品。大きさ、高さともに控え目だが、グレーのシンプルな形状と円柱や付柱の組み合わせは、今や見慣れたスタイルを想起させる。中央のポルチコと、ポルチコより目立って低い建物の両翼が、この建築の重要なアクセントとなっている。

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