奇才ヴィクトル・ペレーヴィンが新作小説を発表!

Legion Media
Legion Media
彼の新作小説『A Sinistra』は、16世紀イタリアの錬金術師・魔術師、そしてAIが生み出した宗教、そして(意外にも)魂の救済を描いた物語だ。

 ヴィクトル・ペレーヴィン(1962~)は、今ではまるで、常に我々読者の前にいたように思えるほどだ。彼は、電力輸送部門のエンジニアとしての教育を受けたが、1991年以来、羨ましいほどの頻度で(そして2003年以降はほぼ毎年)、長編小説を出版してきた。少なくとも、短編集や中編小説集は出している。新刊は、たいてい夏の終わりか秋の初めには完成する。誰もがそれを待ち望み、読み、議論するが、批判することは滅多にない。驚異的な発行部数(初版だけで10万部)は、決して落ちることなく、読者の興奮も冷めることはない。

Legion Media
Legion Media

 62歳のペレーヴィンは、極端に人目を避けて生活しているため、彼はそもそも実在しないとか、ゴーストライターやAIが代わりに執筆しているとかいった噂がしばしば浮上するほどだ。2000年代初めから、彼は、読者との交流を一切絶ち始めた。公の場に姿を現さなくなり、その後は、インタビューはメールでしか応じず、ついにはすっかり雲隠れした。彼に関して残されたものは、20年前の写真と毎年出る新刊書だけだ。

 しかし、その作風も変化している。初期の作品では、ペレーヴィンは、ただ現代を描くだけでなく、それを嘲笑し、常に近未来について若干の予言を行い、その予言はいつも的中した。しかし近年の小説は、いわば文学上のスタンダップ・コメディからは、どんどん遠ざかっている。残っているのは、哲学的な寓話と社会風刺の融合だ。現代の一部を映し出す鏡であり、時代の診断なのだ。

Legion Media
Legion Media

 ペレーヴィンの最近の4作は、「トランスヒューマニズム株式会社」(Transhumanism Inc.)という架空の企業の世界を描いている。この組織は、富裕層に一種の楽園を提供している。肉体が死ぬと、脳が取り出されて、特別な脳容器に入れられ、鮮明でリアルな夢、つまりシミュレーションの中で生き続けるのだ。

 この「不死」の期間は、顧客の支払い能力による。口座残高が枯渇すると、この人工的な楽園は終わる。“デジタルライフ”への移行後も、収入を得ることはできるが、すべてを失うリスクも同様にある。

Eksmo Publishing House, 2025
Eksmo Publishing House, 2025

 このシリーズの主人公は、「内部監査部」の上級工作員であるマルクス・ゾルゲンフレイ(ロールモデルはジェームズ・ボンド)と、彼を監督するロマス提督・司教だ。

 実は、彼らもまた「瓶の住人」だ。つまり、彼らの脳は、「瓶」の中に生きており、彼らは、企業の顧客のシミュレーションの中で、治安機関のスタッフとして働いている。以前の作品では、マルクスは、暴走したアルゴリズムと、地球を中生代に引き戻すはずだったルシファーから、世界を救った。

 今や彼を、新たな任務と新たな挑戦が待っている。瓶の中の脳がどこに消えたのかを突き止めるために、16世紀イタリアを再現した世界へ旅立つのだ。

 窃盗事件の捜査から始まった物語は、誘惑と贖罪の物語へと変貌を遂げる。この新刊のタグ・クラウドには、ゲーテの『ファウスト』、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』、ミハイル・ブルガーコフの『巨匠とマルガリータ』などが含まれている。

<