ロシアの文豪たちは「雪」についてどう考えていたか?

Ilja Rasin / Getty Images
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「これは雪じゃない、ただの厄介事だ」と、コルネイ・チュコフスキーは嘆いた。一方、アレクサンドル・ブロークの場合、吹雪は、叙事詩『十二』を書くきっかけを与えた。

春を返してくれ

 「外の天気はひどい。空から、あの忌まわしいやつが大量に降ってきて、地面にぬかるみをつくる。そいつは、雨のように流れてしまうことも、粉雪のようにさらさら降って積もることもなく、すべての通りを水たまりだらけにする」。詩人・小説家コルネイ・チュコフスキー(1882~1969年)は憤慨した。

モーゼ・ナペルバウム / Sputnik
モーゼ・ナペルバウム / Sputnik

 詩人ピョートル・ヴャーゼムスキー(1792~1878年)も同じ気分を味わった。「また冷え込んだ。昨日は、あいつが空から降ってきた。雹と言う人もいれば、雪と言う人もいれば、みぞれと言う人もいるが、いずれにせよ、ひどいものだった」。彼は、歴史家アレクサンドル・ツルゲーネフにこうぼやいた。

 パブリックドメイン
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 「足元は湿った雪だ。まるで暗い階段の最初のやたらと長い踊り場を歩いているみたいな気分だ。頭上の空はまるで、国際列車の車両のトイレにはめられた、凸凹のすりガラスの向こうにあるように、ぼんやり見える」と、作家フセヴォロド・イワノフ(1895~1963年)は、日記に悲しげに記した。 

オレグ・ツェサルスキー / Sputnik
オレグ・ツェサルスキー / Sputnik

 『貴族の巣』の作者イワン・ツルゲーネフ(1818~1883年)は、相も変らぬ冬の降雪に心から憤慨していた。「吹雪は、朝早くから吹き荒れ、モスクワの陰鬱な通りで泣き叫び、うめき、吠えている。窓の下の木の枝は、地獄の罪人さながらに絡み合い、ねじれ、そのざわめきとともに物悲しげな鐘の音が聞こえてくるのです…。なんという天気でしょう!なんという国でしょう!」 。彼は、フランスのオペラ歌手ポーリーヌ・ヴィアルドーにこう愚痴をこぼした。

ロシア・ナビ(写真: エゴロフ/Sputnik, Sputnik)
ロシア・ナビ(写真: エゴロフ/Sputnik, Sputnik)

 アントン・チェーホフ(1860~1904年)は、クリミアの暖かい冬を愛しており、モスクワ近郊のメリホヴォにいたときは、天候の変わりやすさについて、絶えず不満を漏らしていた。「ここの天気はひどい。例えば、今日の朝5時過ぎには、霜が降り、空は晴れ渡り、太陽が輝き、素晴らしい一日になりそうだった。ところが今、朝8時には、空は既に雲に覆われており、北風が吹き、雪が降りそうだ。雪はまだたくさん残っている。旅は馬車でしかできない。しかも、それが大した冒険なのだ…。寒い!天気が悪いと退屈でたまらない」。彼は出版者ニコライ・レイキンにこぼした。 

雪はインスピレーションを与える

 降雪は季節性の鬱状態を引き起こすだけでなく、計画変更を迫ることもある。「ついに雪が降った。モスクワに行って、ぶらぶら歩き回りたい…」。チェーホフは、作家・ジャーナリスト・出版者のアレクサンドル・スヴォーリンに手紙でこう書き送った。

 「お金の工面がつき、雪が降ったら、すぐにモスクワへ行きます。でも、空から雪は降るけど、お金が降ってくることはない」。詩人アレクサンドル・プーシキン(1799~1837年)は、作家イワン・ヴェリコポリスキーに手紙を書いた。

パブリックドメイン
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 レフ・トルストイ(1828~1910年)は、潔く次の原稿に取りかかった。「天気はひどく、雪が降っていた。『青年時代』を口述し書き上げた。喜びに涙が溢れた。一日中家で過ごした」。そして時には彼は、ただ休むことを選んだ。「雪が降り、狩りに出かけたが、吹雪で何も見えなかった。一日中何もしなかった」

ウラジーミル・チェルトコフ/レフ・トルストイ国立博物館
ウラジーミル・チェルトコフ/レフ・トルストイ国立博物館

 詩人アレクサンドル・ブロークにとって、吹雪はインスピレーションの源となった。渦巻く雪の流れの中に、彼はある時、光る点を見つけた。この光景が彼に叙事詩『十二』を書くきっかけを与えた。

Sputnik
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 「吹雪や雨の暗い夜、街の通りを歩いたことがあるだろうか?風が周りのものすべてをはためかせ、ゆさぶる光景を。雪の結晶が目をふさぐ光景を。風が、吊るされた思い街灯を激しく揺らし、今にも落ちて粉々に砕け散りそうだ。雪はますます激しく渦巻き、雪柱をいよいよ厚く覆う。旋風は、狭い路地には通り道がないので、四方八方に向かって吹きすさび、ますます勢いを増し、外へ解き放たれようとする。しかし、開けた場所などない。吹雪は渦を巻き、周囲を白く覆い尽くし、周りのすべてが輪郭を失い、ぼやけていく」

悪い天気なんてない 

セルゲイ・ヴァシン/MAMM/MDF
セルゲイ・ヴァシン/MAMM/MDF

 「一昨日の夜、新雪の上に雨が降ったが、一夜にして雪に変わった。朝の気温は零度で、そこですべてが決まった。これ以上高ければ雪は溶けていただろうが、その後は下がり、夕方には零下5度まで下がった。そして雪は止むことなく降り続け、今日、モスクワにはふわふわの白い手つかずの雪が積もり、それにより、古いモスクワの、かつて見たことがないような魅力が蘇っている」。作家ミハイル・プリーシヴィン(1873~1954年)は、1952年の初冬について、日記にこう記している。

ロシア・ナビ(写真:ウラジーミル・チェルトコフ/レフ・トルストイ国立博物館)
ロシア・ナビ(写真:ウラジーミル・チェルトコフ/レフ・トルストイ国立博物館)

 レフ・トルストイは、冬の日に歓喜した。「私はタランタス(*旅行用四輪馬車)に乗ってシチェルクノフカまで行き、そこから馬に乗った。雪が降っていたが、それでも私は二度も有頂天な気分になり、神に感謝したほどだった」