長い伝統を持つロシアの合唱団10選
1.クバン・コサック合唱団
発祥の地であるクラスノダール地方では文化遺産に指定されている合唱団。その歴史は200年以上。黒海軍合唱団として1811年に設立され、1936年から現在の名称となっている。主なレパートリーはコサック歌唱と民謡で、芸術監督ヴィクトル・ザハルチェンコの作品もある。ソ連の音楽グループとしては唯一、ドンスコイ修道院の聖体礼儀で伴奏を務めた。
2.スレテンスキー修道院合唱団
実に600年もの歴史を誇る合唱団。修道院の設立と同時に発足した。修道士も神学校の生徒も、参拝者も共に歌ってきた。現在、合唱団は祝祭の祈祷、修道院の土曜と日曜の礼拝で歌う他、コンサートでも公演している。教会音楽の他、レパートリーには世俗の民謡やコサック歌唱も。現代音楽を歌うこともあり、数年前には、人気グループ「リュベ」から数曲を歌い、同グループのトリビュートアルバムに収録された。
3.ミーニン合唱団
指揮者ヴラジーミル・ミーニンが創設し、45年もの長きにわたって指導を続ける合唱団。レパートリーはロシアのコーラス楽曲の古典や、教会音楽、バロック音楽、クロスオーバーなど。ミーニン合唱団によるセルゲイ・ラフマニノフの『徹夜祷』は、最高傑作の1つとされる。
4.ピャトニツキー記念合唱団
1910年創立、ロシアでも最古級の合唱団。民俗学者ミトロファン・ピャトニツキーがヴォロネジ、スモレンスク、クルスクの各県の農民で合唱団を組織した。革命も乗り越えた合唱団は、大祖国戦争中は前線で兵士の慰労も行った。レパートリーには民謡の他、新しい歌曲も加わっていった。世界40か国以上で公演し、ロシア伝統の歌や踊りを紹介している。
5.ポポフ記念児童大合唱団
指揮者ヴィクトル・ポポフが1970年に中央テレビ・ラジオ児童合唱団を設立した。ソ連時代、何らかの公式の祭典に、この児童合唱団は付き物だった。子供たちが合唱したのは、ソ連の作曲家の作品や、児童・青少年向け映画の楽曲など。彼らの歌う「翼のあるブランコ(Крылатые качели)」や「素敵な未来(Прекрасное далеко)」といった名曲は、今も愛され続けている。
6.スパソ・エヴフィミエフ修道院合唱団
アンドレイ・パホモフが指揮するこの合唱団は、スーズダリ市の名物の1つだ。歴史あるスパソ・エヴフィミエフ修道院に集う信者たちだけでなく、市内の教会での合唱によって、広く市民に親しまれている。預言者イオアン斬首聖堂で、夕暮れの深まる中、特別に照らされた古い壁画を背景に彼らが聖歌を歌うプログラム「歌うフレスコ画」が特に有名だ。
7.ボリショイ劇場合唱団
その合唱については、オペラの観客が合唱団にアンコールを求めた事がこれまであっただろうかと、, フランスのメディアが驚きの声を伝えている。ロシアでも最古級の合唱団の1つで、その創立は1776年、ペトロフスキー劇場においてだった。革命前は、帝国ボリショイバレエ劇場のオペラの伴奏を務め、セルゲイ・ディアギレフの「ロシアの四季」にも参加した。ソ連時代は、1980年のモスクワオリンピックの開会式にも参加。セルゲイ・ボンダルチュク監督の映画『戦争と平和』にも、彼らの歌が使用されている。
8.モスクワ宗務院合唱団
16世紀末まで存在した、古い伝統的な府主教合唱団を起源とする。聖歌隊として、礼拝だけでなく、国家の重要な式典にも参加した。1721年、教会を管理する宗務院が設立されると、合唱団は宗務院合唱団となった。革命後に廃止され、2010年になってようやく復活が決定した。
9.ユルロフ記念合唱団
1900年にモスクワ郊外のショルコヴォで設立されたイワン・ユホフ合唱団が起源。彼らは聖歌を歌い、革命後は初期のロシア・ミュージカルコメディ映画用にも収録を行った。ソ連時代にはドミトリー・ショスタコーヴィチとゲオルギー・スヴィリドフの楽曲の初演を行い、国外でロシアの教会音楽を披露した嚆矢でもあった。レパートリーはロシア民謡や、国内外のクラシック音楽。現在は、1958~1973年の間に合唱団を指導したアレクサンドル・ユルロフを記念した名称となっている。
10.ペテルブルク聖歌合唱団
皇帝の聖歌隊は、宮廷においてあらゆる重要な行事に参加していた。1703年のペテルブルク建都の式典でも歌っている。1763年にエカテリーナ2世が「帝室聖歌合唱団」に改称。作曲家フレデリック・シューマンは、これまで聴いた中で最も美しい合唱団であると絶賛した。
この合唱団のためにミハイル・グリンカ、ニコライ・リムスキー=コルサコフ、ドミトリー・ボルトニャンスキーらといったロシアの大作曲家たちが作曲している。革命後はクラシック音楽や民謡、革命歌を歌うようになった。レパートリーに教会音楽が復活したのは、1980年代になってからである。