ヴィクトル・ツォイが遺した人気曲5選

Legion Media
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1980年代末から1990年代初頭にかけて、ロックバンド「キノー」とリーダーのヴィクトル・ツォイは社会現象とも言える人気であり、まさにペレストロイカの象徴でもあった。

1.『変化を!』(«Перемен!»)

 1986年に作られた曲だが、全国的な知名度を得たのは、映画『アッサ』のラストシーンで、ツォイがこの曲を歌うコンサートのシーンが使われたのがきっかけ。

 「変化を!僕らの心が求める」と、サビの部分で力強く訴える。ソ連ではペレストロイカが始まり、繊細な芸術家であるツォイは迫る変革を感じ取り、変革を切望する民衆の心理を捉えた。こうして誕生した歌は時代を象徴するヒットとして、まさしくペレストロイカのテーマ曲となったのである。

2.『一箱のタバコ』(«Пачка сигарет»)

 ツォイが1988年にこの曲をレコーディングしていた頃、多くの友人や評論家たちの評価は懐疑的だった。最終版は出来がイマイチで、同じことの繰り返しではないか、と。しかし、このシンプルな曲は根強い人気を誇り、仲間内でギターの伴奏つきで歌う曲として今でも定番である。

 歌詞の人物は悲嘆にくれ、道を見失っている。メランコリックな内容だが、かすかな希望も垣間見える。ポケットにタバコが1箱あれば、事態はそんなに悪くない。ツォイはそう歌う。

3.『カッコウ』(«Кукушка»)

 ツォイの最末期の作品の1つで、亡くなる直前にレコーディングが行われた。そしてツォイの死後、ラストアルバムとなった1991年の『黒いアルバム』に収録された。この曲が運命や宿命論といった哲学的な問題を取り上げているのは、象徴的と言えよう(ロシア人はカッコウの鳴き声を聞いて、自分はあと何年生きられるだろうか、と訊き返す風習がある)。

 現在でも人気がある曲で、カバーがリリースされる事も多い。

4.『夜を見た』(«Видели ночь»)

 ツォイとしては異色の、明るい曲調。のんきに夜の散歩を楽しむ若者についての歌。

 1986年に発表され、キノーの5枚目のアルバム『夜』のトップを飾る曲である。ツォイ自身は、彼にとって夜という時間は特別で、多彩かつとてもロマンチックなものだと語っていた。

 この曲の人気が再燃したのは2000年のこと。モルドバのロックバンドZdob și Zdubが、ロマのコーラスを加えたカバーバージョンを発表して、注目を集めた。

5.『太陽という名の星』(«Звезда по имени Солнце»)

 同名のアルバムに収録されている曲で、ツォイが主演した映画『イグラ』(邦題『僕の無事を祈ってくれ』)で劇中歌として使われている。1989年に発表された反戦歌であり、また、全ての人間が否応なしに迎える最期について思いを巡らせている。

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