『戦争と平和』のナターシャ・ロストワのモデルは誰だったのか?

ロシア・ナビ(写真:M. コズロフ/Sputnik、E.アレクセーエフ/Sputnik、パブリックドメイン)
ロシア・ナビ(写真:M. コズロフ/Sputnik、E.アレクセーエフ/Sputnik、パブリックドメイン)
「私はターニャを取って、それをソーニャと混ぜ合わせ、ナターシャを作り出した」。文豪レフ・トルストイ(1828~1910年)は、自らのヒロインが生まれた経緯を説明していた。

 ソーニャとは、作家の妻であるソフィア・ベルス、結婚後のソフィア・トルスタヤのこと。ターニャ(タチアーナの愛称)はその妹で、結婚するまでの数年間、長期にわたって、作家の領地ヤースナヤ・ポリャーナに滞在していた。

 トルストイは、二人の姉妹の特徴を均等に振り分けたわけではなかった。若いナターシャの容姿と快活でおてんばな気質は、ほとんどそのままタチアーナから写し取られている。『戦争と平和』には、トルストイがベルス家で目にした日常の出来事が数多く取り入れられている。そのなかでも特に印象的なのが、人形ミミの結婚式の場面だ。

 ミミの原型となったのは、タチアーナが祖父から贈られた大きな人形だった。小説には、13歳のナターシャが誕生日の祝いの席で、友人を人形と「結婚させる」のだ、と笑いながら母に告げ、その友人に「ミミにキスして」と頼む場面がある。この遊びとしての「結婚式」は、ほとんど変更されることなく現実の出来事から採られたものだった。タチアーナは従兄に人形へキスするよう頼んだのである。

 トルストイは、妻の妹と自分のヒロインとの肖像上の類似を挿絵画家に求め、タチアーナ・ベルスの幼少期および少女時代の写真を見せていた。

 小説のエピローグで読者が目にする母親としてのナターシャは、すでにソフィアをモデルとして創作されている。『戦争と平和』が完成に近づいた頃、トルストイ夫妻にはすでに年長の子供たちが生まれており、作家は妻の日常的な気配り、献身性、そして家庭への没頭を自分のヒロインに加えたのだった。