ロシア人も間違えやすいロシア語単語10選
1.Дуршлаг(ざる、コランダー)
穴の開いたボウル状の調理器具。ロシアではマカロニの水切りが最も多い用途だろう。語源はドイツ語のDurchshlag。ドゥルシュラグ、と発音するはずだが、なぜか少なからぬ人が2文字目と3文字目を混同してドルシュラグ(друшлаг)と発音する。実は古い辞書だと、確かにдрушлаг、さらにはтрушлагという表記も存在する。ということは、祖父母世代からそのような発音を聞いた人が、そう覚えたとしても不思議ではない。
2.Винегрет(サラダ、ごた混ぜ)
発音を間違える人はいないが、スペルに関しては本当に記憶が「ごた混ぜ」状態(実際、無秩序なごた混ぜ状態を指す隠喩表現としても用いられる)。венигретやвинигретなど、スペルミスのバリエーションは多いが、正しくはвинегрет一択である。
3.Привилегия(特権、特典、専売特許)
この単語でも、「и」と「е」の文字が混乱の原因だ。どうやら、この2文字の正しい順番を覚えられるのは、一部の人の「専売特許」らしい。винегретとは異なり、アクセントが置かれる「е」以外は「и」だ。
4.Скрупулёзно(念入りに、周到に)
語源はラテン語のscrupulusで、これは「尖った小さい石」を意味する。またscrupleは古い計量単位で、およそ1.2g。響きがロシア語らしくないせいか、なぜかロシア人はこの語をよく間違える。発音もスペルも、「скурпулёзно」となる誤りが非常に多い。スマホやワープロソフトのオートコレクト機能にはおおいにお世話になるわけだ。
5.Прецедентとинцидент(前例、と、 インシデント)
これも、よく似た言葉同士で「и」と「е」の順番が混乱するパターンだ。加えて、唐突に余計な「н」が混じって、прецеНдент、инциНдентなどと発音されたり表記されたりもする。前者についてはどうやら、претендент(候補、ねらう者)と混同されるようだ。
6.Чрезвычайно(きわめて、非常に)
ロシア語には前置詞・接頭辞「через(~を越えて、貫いて)」がある。「чрез」は、その古い形である。そのため現代人はしばしば間違えて、черезвычайноと発音・表記してしまう。
7.Чересчур(あまりに、と、過剰に)
ロシア語には、(без/бес-、воз/вос-、из/ис-、через/черес、など)という、ペアになった接頭辞がある。これらの接頭辞のすぐあとに有声子音(б, в, г, д, ж, з, л, м, н, р)が来る場合、有声子音の前の文字は「з」となる。無声子音(к, п, с, т, ф, х, ц, ч, ш, щ)なら、直前の文字は「с」だ。この文法は滅多に間違えられることは無いが、例外的にчересчурは、ついつい「череЗчур」と書いてしまうパターンが多い。
8.Конфорка(サモワールの蓋)
語源はオランダ語のkomfoorだが、3文字目は「エム」である。かつてはロシア語でも「комфорка」と発音・表記したが、次第に変化して現在の形に落ち着いた。だが、歴史的な記憶が強いせいか、人々は今もよく間違える。
9.Искусственный(人工の)
「н」が2つ続く形容詞と形動詞はロシア人も煩わしいと感じてしまう。しかも、連続する子音がもう1カ所あるし、そもそも子音がやたら多いときた。ミスのパターンもискуственныйや、「с」を連続させる箇所を間違えたисскусвенныйなど様々。加えて、よく似た語の「искусный(上手い、熟練した)」には連続する子音が無いのもややこしい。
10.Следующийとбудущий(次の、と、未来の)
意味がよく似ているせいか、この形容詞のスペルミスは多い。будущийに余計な「ю」を加えてбудующийにしてしまい、следующийの場合は逆に「ю」を忘れてследущийになってしまいがち。後者は「ю」をハッキリ発音しないため、なおのこと間違いが多い。
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