ミラ・アンドレーワ:ローラン・ギャロスを制したロシアの新星
「物心ついた頃からローラン・ギャロスを見てきました。いつかこのトロフィーを手にするのが夢でした」
そう語るアンドレーワは2007年、シベリアの都市クラスノヤルスクに生まれた。テニス好きだった母ライサの影響で競技を始め、幼い頃から姉エリカとともにコートで多くの時間を過ごした。
「最初は姉がテニスを始めました。私は3歳頃からコートでボール拾いをしていましたが、本格的にラケットを握ったのは6歳になってからでした」
アンドレーワが最初に指導を受けたのは、地元のコーチ、マリーナ・パブロワだった。しかし、長い冬が続くシベリアでは十分な練習環境を確保することが難しかった。そこで一家は、さまざまなコートで練習できる環境を求めて南部のソチへ移住する。
そこで指導者となったのがキリル・クリュコフだった。彼は後に、幼い頃のミラについてこう振り返っている。
「彼女はとても理解が早かった。子どもによっては練習に興味を持たせるのが大変ですが、彼女は最初から自分が何のためにここにいるのかを理解していました。コートを読む力、ボール感覚、試合の組み立て方――どれも優れていました」
さらにクリュコフは、姉エリカの存在も大きな刺激になったと語る。エリカはミラより先にジュニア大会で活躍し、14歳の時には同世代世界ランキング3位にまで上り詰めていた。
テニスはアンドレーワにとって単なる競技ではない。本人は「テニスができないと寂しくなる」と話すほど、このスポーツを愛している。
「新しいグリップを巻いたラケットを握る感覚が大好きです。ストリングの中心でボールをとらえた時の音も好きです。休養を与えられても、3日もすると壁打ちを始めたり、素振りをしたりしています」
競技生活との両立のため、12歳からは通信教育へ切り替えた。2019年にはジュニア大会「オレンジボウル」で優勝し、その才能はロシア国内でも広く知られるようになる。
2021年にはチェコで開催されたジュニア国別対抗戦で優勝。2022年にはフランス・カンヌのEliteアカデミーで練習を開始し、同年だけで国際テニス連盟(ITF)主催大会4勝を挙げた。さらに全豪オープン・ジュニアでは準決勝進出を果たしている。
その後、WTAツアーで勝利を重ねると、「進化版マリア・シャラポワ」とまで評されるようになった。16歳でウィンブルドンのベスト16入りを果たし、WTAランキングでは1年間で359ランクも上昇。世界46位まで躍進した。
2024年からは元世界ランキング2位のコンチタ・マルティネスの指導を受けるようになる。マルティネスは当時から「このまま成長を続ければ、世界最高レベルの選手になれる」と期待を寄せていた。
その期待に応えるように、アンドレーワは急速に実績を積み重ねる。2024年のローラン・ギャロスでは準決勝に進出し、当時世界ランキング2位だったアリーナ・サバレンカを破った。同年夏にはルーマニアでWTAツアー初優勝を達成。さらにディアナ・シュナイダーとのペアでパリ五輪女子ダブルス銀メダルを獲得した。
2025年にはドバイ選手権を制し、WTA1000大会史上最年少優勝記録を樹立。世界ランキングでもトップ10入りを果たした。
そして迎えた今シーズン。アンドレーワはローラン・ギャロスで圧巻の戦いを見せ、ついに憧れだったタイトルを手にした。現在は世界ランキング6位につけ、WTAレースランキングでも首位に立っている。
コートを離れた彼女は、読書やドラマ鑑賞を楽しむごく普通の19歳でもある。大の犬好きとしても知られ、昨年には念願だった愛犬、バーネドゥードルの「ラッシー」を家族に迎えた。
また、元世界王者アンディ・マレーの熱心なファンでもある。数年前にはマレー本人がSNSでアンドレーワの精神力と向上心を称賛し、「将来のチャンピオン」と呼んだこともあった。