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一般的には「ミズギリ」と呼ばれているが、これは古代ロシア語で「編む」という意味を持つ言葉である。
南ロシアのタランチュラ(コモリグモ属、学名Lycosa singoriensis)は恐ろしい姿をしている。体長3センチのオレンジがかった茶色の体に、毛で覆われた8本の足がついていて、非常に鋭い目つきをしている。
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人間がこの蜘蛛に咬まれて死ぬことはないとされているが、咬まれると、スズメバチに刺されたときのように大きく腫れる。とはいえ、この蜘蛛をそれほど恐れる必要はない。咬むたびに毒を出すわけではなく、また蜘蛛は人間に興味がないからだ。
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ミズギリはステップの生態系にとってとても重要な存在であり、ロシア国内のいくつかの地域ではレッドブックにリストアップされている。
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蜘蛛は深い垂直穴に生息している。近くを走り抜けようとする小さな虫を電光石火の速さで捉え、食事のために取っておく。獲物が近づいてきたことを知らせる「シグナル」となっているのは、蜘蛛が穴の上にかけておく蜘蛛の巣である。
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タランチュラの雌は子沢山で、母蜘蛛は、子が自力で生きていけるようになるまで、子を背中に背負って育てる。タランチュラの雌には最大で50匹の子どもがいることもある。子蜘蛛は、必ず自分の決断で、親元を離れなければならない。