ロシアにのみ生息する生き物10選
1.メードヌイ島ホッキョクギツネ
体重4~8.8kgの小型種で、コマンドルスキー諸島のメードヌイ島に生息する。被毛は1年を通してスモーキーグレーと褐色。島嶼性のホッキョクギツネは、極北の環境によく適応している。冬季は肉球が毛で覆われて、雪上の移動を可能にする。通常は家族単位で生活している。食料は海魚、鳥、哺乳類。さらにこの種は非常に「おしゃべり」で、様々な鳴き声を発する。本種は絶滅危惧種であり、幼体が感染するミミヒゼンダニ症が原因で、個体数は50に満たない。
2.ズグロマーモット
沿バイカル北部、ヴェルホヤンスク山脈、コルィマ山脈、カムチャッカに分布し、山地の斜面を生息域とする。露語で「黒い帽子のマーモット」を意味するその名は、頭頂部の黒っぽい模様が帽子を思わせることが由来。本種は、マーモットの中でも最大級の大きさを誇る。脂肪を蓄える前でも、その体重は8kgにもなる。危険を察知すると、仲間に報せるために口笛のような鋭い声を発する。8月末から9月初め頃に冬眠に入り、4月~5月頃に冬眠から覚める。
3.ノヴォゼメリスキー・トナカイ
ノーヴァヤ・ゼムリャ列島を構成する南北の島に、固有種のトナカイが生息している。19世紀から20世紀初めにかけては狩猟対象となっていた。個体数も多かったようで、当時の研究者は現地のトナカイが大群で島を行き来する様子を描写している。しかし、やがて食料の不足から個体数は減少する。すると今度は、トナカイ牧場が計画されて家畜のトナカイが持ち込まれた。この計画はとん挫し、交雑が起きて固有の亜種が発生した。現在、ノヴォゼメリスキー・トナカイはレッドデータブック入りしている。
4.ロシアデスマン
モグラの仲間。マンモスの時代から続く、かなり原始的な種である。泳ぎが上手く、穴も掘るため、水のモグラとも呼ばれる。昆虫食。目立つウロコ状の尾は、体長と同じ20㎝と大きい。水かきの付いた脚、吻部と鼻も特徴的。食欲旺盛で、カタツムリや貝類も好む。ヴォルガ川、ドン川、ウラル川、ドニプロ川などの流域に生息する。古くから栄えた種だが、現在は絶滅危惧種であり、レッドデータブック入りしている。
5.ソデグロヅル
ヤクートの人々はシベリアの鶴を、空と太陽を象徴し、地上と天上の勢力を仲立ちする聖鳥として敬う。ソデグロヅルの舞う姿が見られれば、またとない幸運だ。
アルハンゲリスク州、サハ共和国、ヤマロ・ネネツ自治管区、コミ共和国に生息する。個体数は約3000羽。ソデグロヅルは近縁の種と比べてクチバシが長く、エサを獲るのに都合が良い。高く、澄んだ鳴き声が特徴。
6.バイカルアザラシ
淡水生のアザラシで、バイカル湖に生息する唯一の哺乳類である。お人形のような容姿に似合わず、魚を主食とする優秀なハンターだ。生まれた時の体色は白いが、2~3か月ほどで体毛は銀色がかったグレーに、その後は濃い茶色になる。雪の中に掘った専用の「家」か、目立たない場所に自然にできた氷の洞穴や横穴で生活する。現在の生息数はおよそ13万頭。
7.クサリヘビ属Vipera magnifica
すばらしいクサリヘビ、である。これは修辞ではなく、そういう名前なのだ。Реликтовая гадюка(太古からのクサリヘビ)、もしくはВеликолепная гадюка(すばらしいクサリヘビ)と呼ばれる。クラスノダール地方とアディゲ共和国の狭い範囲にのみ生息する毒蛇である。黒と茶色が混ざった体色のおかげで、オークの森の中でほとんど目立たず、草むらにも溶け込む。最大でも50㎝ほどと小型で、トカゲやネズミなどを捕食する。絶滅危惧種である。
8.カムチャッカトガリネズミ
一見すると、可愛らしいヌイグルミのようでさえある。カムチャッカに生息する、トガリネズミの一種だ。茶色~グレー系の体毛の小型種(体長6㎝、体重5gほど)で、尾が長い。昆虫食。冬季は冬眠こそしないが、まるで乾燥したかのように縮み、春になると元のサイズに戻る。
9.プトラナシベリアビッグホーン
シベリアビッグホーンのラテン名はOvis nivicola、「雪の中に生息する羊」という意味だ。その亜種の1つが、プトラナシベリアビックホーンで、文字通り、プトラナ台地に生息する。オスは渦巻き状の大きな角を有し、メスの角は大きく湾曲しているがやや小さめ。被毛は褐色~黄色がかった白で、冬季は密度が高く分厚くなり、厳しい環境から身を守る。大型種ながら崖の多い斜面で活動し、熟練アルピニストよろしく軽快に岩だらけの山を動き回る。植物、苔、地衣類を食する。個体数は1500頭に満たないとされる。
10.バルグジンクロテン
このたいへん可愛らしいテン属の一種はバイカル湖の東岸、バルグジン山脈とバルグジン川の一帯に生息している。密度が高くて柔らかく美しい毛皮が、この小動物を世界的に有名にした。濃い茶色から砂色までその毛色は多様だが、絹のような光沢が特徴で、「柔らかい金」とまで称された。