無料で観られる、休暇を描いたソ連映画8選

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海辺でゆっくり過ごすか、わくわくの川下りか。あるいは密輸団を追ったり、理想の相手を見つけたり。休暇に出かける映画の主人公たちを待つ運命はさまざまだ。

1.誠実な友人たち(『Верные друзья』)、1954年

ワシーリー・メルクリエフ 複製 / Sputnik (左から)ラパン-アレクサンドル・ボリソフ、チゾフ-ボリス・チルコフ、ネストラトフ
ワシーリー・メルクリエフ 複製 / Sputnik

 幼なじみ3人組には、自作の筏で川下りをするという、昔からの共通の夢があった。「長くて20日間くらいだろう」と考え、仲間は旅行に出発。神経外科医、畜産技師、建築学者の3人組は魚釣りに興じ、歌を歌い、ささやかな冒険旅行を楽しんでいた。労働英雄たちを扱った当時の映画と対比を成すように、この作品はシンプルな魅力で共感を呼び、また、エリートに対するちょっとした皮肉を垣間見せる。例えば3人組の1人は、てっきり友人たちとフェリーの一等客室で旅するものと思い込んだ挙げ句、筏の上でもエレガントなスーツと帽子のまま過ごす。監督は、名手ミハイル・カラトーゾフ。本作は、彼のフィルモグラフィーで唯一のコメディ作品である。数年後、カラトーゾフの『鶴は翔んでゆく』がカンヌで、そして世界で大絶賛を浴びることになる。

2.『3プラス2』(『Три плюс два』)、1963年

Sputnik ゾーヤ役のナタリア・ファテーエワ(右2番目)とナターシャ役のナタリア・クスティンスカヤ(右)
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 無計画旅行で海に繰り出した3人組。ビーチに寝泊まりして休暇を満喫しようとするが、そこへ見知らぬ2人の女性が現れ、そこは自分達の場所だと主張し始める。両陣営は趣向を凝らしてお互いの邪魔をするが、結局、いつの間にか惹かれ合ってしまう。

 映画のロケ地はクリミア。本作の影響もあり、クリミアのビーチでのテント生活という休暇方法が一大ブームになった。静かな入り江で誰にも邪魔されず、海を楽しみたいと皆が願った。夏が舞台のこの古いコメディは、海辺でのみ味わえる、のんびりした無二のあの感覚を蘇らせてくれる。

3.『ダイヤモンドの腕』(『Бриллиантовая рука』)、1968年

Sputnik ゴルブンコフ役のユーリー・ニクリン(左)、コゾドエフ役のアンドレイ・ミロノフ、ゴルブンコワ役のニーナ・グレベシュコワ。
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 フェリーで海外旅行に出かける主人のセミョン・ゴルブンコフ。しかし不幸にも、マズイ時にマズイ場所に居合わせてしまう。家に帰ってきた時は、腕がギプスで固定されていた。しかし、「骨折」というのはウソ。実は旅行先で散歩中に転倒して気を失っている最中に、ギプスをつけられ、中に宝物を埋め込まれていたのだ。こうしてセミョンは警察の捜査に協力し、犯人と組織のボスを見つけ出すミッションに参加することになる。

 『ダイヤモンドの腕』のセリフは広く人口に膾炙し、作中の歌曲もヒットした。ソ連時代は非常に珍しかった海外旅行、魅力的な詐欺師、そのコワモテの相棒、倫理にうるさいマンション管理人といった登場人物が、本作を動かす軸になっている。

4.『ハッピー・ゴー・ラッキー』(『Печки-лавочки』)、1972年

Sputnik ワシーリー・シュクシン(右3番目)。左から3番目:ナタリア・グヴォズディコワ。
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 旅行で南の海へ向かう夫婦のロードムービー。イワンとニューラはアルタイ地方の僻地の村に暮らしている。村は総出で、宴席と歌で2人を送り出す。夫婦は遠路を鉄道で向かい、道中を偶然出会った言語学者と、コソ泥を相手に過ごす。僻地の村出身の夫婦にとっては、列車も、村人とは異なる人々も、騒々しい街も、何もかも目新しい。ようやく映画のラストになって、夫婦は目的地に到着する。

 この映画は、あたかもパラレルワールドへの旅のようであり、そこでは現在の世界を知らぬまま、未来の話をしているかのようでもある。

5.『休日の生活』(『Из жизни отдыхающих』)、1980年

Sputnik リトアニア・ソビエト社会主義共和国人民芸術家レジマンタス・アドマイティスとロシアSFSR名誉芸術家ジャンナ・ボロトワ。
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 シーズン終わりの海岸。天気は曇り、濃い霧が保養地の宿泊所を覆い、滞在者は暇つぶしの手段を考えるしかない。強引なウワサ話、体操、とりとめのない雑談、陽気でハイパーアクティブなリーダーに率いられたクラブ活動など。そんな中、ロマンスも生まれる。

 時間が止まったかのような、センチメンタルな映画だ。休暇の終わりを告げるフェリーもまた、新たな宿泊客を乗せて霧の中から現れる。

6.『私の夫になりなさい』(『Будьте моим мужем』)、1981年

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 「一時的な夫」をめぐる、抒情コメディ。ヒロインは息子を連れてリゾートにやってくるが、宿泊所はカップル向けのものしかない。そこでヒロインは、偶然出会った男性に夫役を演じるよう、依頼する。

 ロケはソチ近郊で行われた。海、人でいっぱいのビーチ、空き部屋が全くないホテルや個人経営の宿泊施設・・・どれも、ソ連人なら一度は体験しただろう。リゾート地で起きるすれ違い劇をBGMが彩り、パートナー役は当時のトップ人気俳優アンドレイ・ミローノフが演じた。

7.『Sportloto-82』(『Спортлото-82』)、1982年

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 南のリゾートを目指す人々と、当たりクジを巡る物語。主人公のコースチャは、列車で偶然知り合った女性を探している。コースチャは彼女にスポーツくじを買ってやったのだが、どうせ当たらないと思った彼女は彼に返してしまった。だが、これが当たりクジだったのである。ところがおっちょこちょいなコースチャは、列車内で2人で読んでいた何冊かの本のどれかに、そのクジを挟んだままにしていた。こうして当たりクジを巡って、その存在を偶然知った2人の詐欺師も含めた争奪戦が開始されたのである。

 クリミアの美しい風景をバックに、メインキャラたちは数々のギャグ展開に巻き込まれる。ストーリーは平凡だが、それでもこの映画は夏の冒険の魅力的な雰囲気を良く伝えている。

8.『愛と鳩』(『Любовь и голуби』)、1984年

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 リゾートを舞台に、鳩とハッピーエンドが印象深いロマンチックコメディ。村に住むワシーリーは、海への保養旅行に出かけ…妻子のいる家に帰らない。海辺でロマンスが花開き、彼は別の女性のもとに行ってしまったのだ。一方、ワシーリーの妻の落ち込みようはひどく、ワシーリーが愛してやまない鳩を殺してやると凄む。しかし、ワシーリーの街での新生活はやがて破綻をきたす。新しいカップルは、あまりにも違いすぎた。ワシーリーは傷ついた妻と、父を許さない長男と改めて関係を築き直さなければならない。

 これほど広く大衆に愛された映画は、他に無いかもしれない。白樺の木に咲く紙の花や、小屋のドアから海に転落する主人公といった、ささやかながら派手な場面も印象深いが、ストーリーに絡む鳩もまた、作品の重要な要素の1つだ。

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