2025年、誰が、そしてなぜロシア語を海外で学ぶのか?
ロシア文化への変わらぬ関心
レフ・トルストイやフョードル・ドストエフスキーといった文豪の名作はもちろん、現代文学、演劇、音楽、映画など、ロシア文化は今なお世界中で人々を惹きつけている。こうした文化に深く触れたいと考える人々にとって、ロシア語の習得は避けて通れない道となる。
では、ロシア国外でロシア語を学ぶには、どのような手段があるのだろうか?
80カ国にある「ロシア・ハウス」をはじめとするロシア語教育機関では、ロシア語の普及とロシア文化への理解を深める活動が進められている。
また、プーシキン国立ロシア語大学は、国際的なボランティアプログラム「世界のロシア語大使」を10年以上にわたり運営している。世界中の大学でも、スラブ学科や翻訳科でロシア語教育は継続されている。
グラナダから世界へ:ラファエル・ティラード教授の取り組み
スペイン・グラナダ大学で30年以上にわたりロシア語を教えるラファエル・グスマン・ティラード教授は、自身の使命を「ロシア語の普及に仕えること」と語る。同大学では2つの学部(翻訳学科と人文科学)でロシア語を教え、若手翻訳者の育成にも力を注いでいる。
2021年には、ロシアへの多大な貢献が認められ、ロシア連邦国籍を取得した。その4年前には、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領より「友情勲章」を受章。
「ここ数年、学生数の減少が見られたが、今年はその傾向に変化が見られ、再び関心が高まってきています。通常、そしてこれは非常に顕著なことですが、初心者は学習に困難に直面し(特にスペイン語話者にとって音声学は難しい)、時にはコースを中退してしまうことがあります。しかし、今年の新入生は、ロシア語を学ぶ目的意識が明確で、誰ひとりとして途中退学することがありませんでした。」と、教授は語る。
ロシア語教育を持続させるためには、言語の学びが個人の喜びだけでなく、職業的にも意味を持つことを学生に示す必要があると、ティラード教授は強調する。
「我が国では、伝統的にロシア語はどの学校でも教えられていません(フランスやドイツとは異なります)。私たちはこの状況を変え、中等教育のカリキュラムにロシア語を第二外国語として取り入れることを正当化しようと努めています。」
ロシア語教育の未来をつなぐ国際ネットワーク
現在、ラテンアメリカ、スペイン、ポルトガルなどのイベロアメリカ地域では、ロシア語教育への関心が高まりを見せている。こうした動きを背景に、2025年には「イベロアメリカ・ロシア語専門家とスラヴ学者のネットワーク」が設立された。
「このネットワークは、ロシア語教師を団結させ、活動の基盤を整えることを目的としています。すでに成果が現れつつあり、教育活動を支援する財団も増えてきました」と教授は話す。
現代ロシア文学の翻訳とロシア語学習の接点
ティラード教授によれば、現代ロシア文学の翻訳が、学生にとってロシア語を学ぶ重要な動機となっているとのこと。文学翻訳研究所などロシアの諸財団は、外国人翻訳者への助成金を通じて翻訳活動を支援している。
教授自身も、ロシア文学をスペイン語圏に紹介する活動を続けており、2020年にはエフゲニー・ヴォドラスキンの話題作『ラウルス』をスペイン語に翻訳。グゼル・ヤヒナの『ズレイハの目を開く』と並び、スペインで大きな反響を呼んだ。
さらに、ティラード教授は「ルースキー・ミール財団」と協力し、ロシア文学の教科書制作にも携わっている。
モスクワで国際会議にも登壇
ティラード教授は、2025年10月にモスクワで開催される「第17回ロシア世界会議」に登壇予定。同会議では、ロシア語の国際的な地位や今後の展望について、世界各地からの研究者・教育者と意見を交わす。