ソ連の「ロケット」、ロンドンにあらわる

Evening Standard/Hulton Archive / Getty Images
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KGBエージェントもエリザベス2世も、喜んでこれに乗っていた。

 兵器ではなく、河川で旅客輸送をする水中翼船のことである。1950年代末、ソ連の水中翼船「ラケータ(ロケットの意)」シリーズはヨーロッパに一大旋風を巻き起こした。

 当時としては際立って未来的なデザインが目を惹く。客室は広くて居住性に優れ、航行時の安定性も高かった。しかし何といっても、特徴はその速度である。一般的な船舶は河川を時速25㎞程度で航行していたのに対し、ラケータは最大で時速70㎞という高速性能が自慢だった。

 当然のソ連では旅客を輸送するのはもちろん、政府要人も運んだ。ラケータはKGBの装備品にもあった。

 ソ連製高速船ラケータは国外での売れ行きも好調で、しかも市場は社会主義陣営に限られなかった。フィンランド、ドイツ、オーストリアといった国々の河川でも、ラケータは活躍した。イギリスでは、ロンドンとグレーブゼンドを結ぶテムズ川の航路に就航した。

 1975年5月20日には、エリザベス2世も夫のフィリップ殿下と共に乗船しており、船旅には大満足であったという。