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エカテリーナ2世の中国宮殿とは?
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サンクトペテルブルク近郊ロモノーソフ市の宮殿・庭園アンサンブル「オラニエンバウム」の中でも、この中国宮殿は最も豪奢な建築の1つだろう。
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簡素なファサードの向こうに、中国趣味の広間が皇帝級の豪華さで広がる様は、仕掛けのある小箱のようだ。美術史家のアレクサンドル・ベヌアは、エカテリーナ2世のこの私邸を、いくら眺めても飽きない優美な飾り物と評した。
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建築家のアントニオ・リナルディが建設した。部屋は、当時の流行だったシノワズリ様式で、金箔や塑造、滑らかな曲線が多用され、ヨーロッパや東洋の陶磁器、鏡、中国や日本の漆塗り家具が置かれた。女帝の私邸を飾るために、隊商が何度も中国に送られた。女帝は1768年に、最初の客をこの私邸に招き入れた。
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宮殿の目玉とされるのが、ビーズの執務室である。その壁は、絹糸とガラスビーズで刺繍された12の壁画パネルで飾られている。煌めく背景の中を蝶や鳥が舞い、金色のフレームは木の幹を模している。魔法の森のような空間だ。エカテリーナ2世はこの執務室がお気に入りで、高位の客を迎えるのに使った。