パラリンピック2026金メダリスト、アナスタシア・バギヤン
バギヤンは2001年、ロシアのペルミ市で生まれた。15歳のときに視力を失うが、絶望することはなかった。2年後にはスキーを始め、両親も彼女を支え続けた。
「最初は、落ち込んでいた娘の気持ちを紛らわせ、家族とのつながりを取り戻すために、私たちだけでスキーを始めました。ところが娘はすぐに夢中になったのです。視力を失っても、せめて好きなスポーツで成功してほしいと思いました」と母のイリーナ・バギヤンは語る。
アナスタシアは、オリンピック予備軍適応スポーツ学校でトレーニングを受けた。2018年にクロスカントリースキーを専門種目に選び、コーチのアレクセイ・トゥルビンの指導のもと本格的に練習を開始する。
視覚障害のある選手はガイドとペアで競技を行うため、彼女はトップアスリートのセルゲイ・シニャキンとコンビを組んだ。彼の役割は、コースの状況を伝え、動きを合わせ、安全を確保することだ。
バギヤンは競技と学業を両立させている。現在はチャイコフスキー体育アカデミーの学生で、個別のスケジュールで学びながら、トレーニングや大会を欠かすことはない。
2021年からロシアのパラリンピック代表チームの一員となり、ノルウェー・リレハンメルで開催された世界選手権では銅メダルを獲得。また、ロシアのクロスカントリースキーとバイアスロンの国内大会やカップ戦、冬季パラリンピック大会「We Are Together. Sport」でも優勝を重ねてきた。
コーチのトゥルビンはこう語る。
「彼女は常に勝とうとします。ナスチャ(アナスタシア)はとても勤勉で、強い目標意識を持った選手です。」
ロシア・パラリンピック委員会のパーヴェル・ロジコフ会長も、彼女を「優秀な学生」と評価している。技術は洗練されており、何よりスキーを心から楽しんでいるという。
2026年1月、バギヤンはドイツで開催されたワールドカップでマススタート優勝を果たす。2月半ばには、ドロミテ山脈のパッソ・ラヴァゼ(イタリア)で大会に向けた最終調整を行った。
出発前、コーチはこう声をかけた。「メダルを取ってこい。」
しかし勝利は簡単ではなかった。ヴァル・ディ・フィエンメでは気温が高く、コースの雪が緩んでいた。多くの選手が練習中に転倒するなか、バギヤンとシニャキンはこの難しい状況を乗り越える。
クラシックスプリントでは、3分16.1秒のタイムで優勝。2位のドイツのリン・カッツマイヤーに9.2秒差をつけた。
「本当にうれしいです。この金メダルを国のみなさんに捧げたい。応援してくれたすべての人に感謝します。そして、ガイドのセルゲイ・シニャキンにも特別な感謝を。私たちは一緒に勝ったのですから」
一方、シニャキンは控えめにこう語った。「今の気持ち? コースで1200㍍走り切ったという感じですね。」
しかしファンの反応はもっと感情的だった。
「奇跡だ!涙が出る!」
「どれだけ努力したことか……よくやった、アナスタシア!」
「なんて素晴らしいコンビなんだ!」
そして水曜日、彼女は2つ目の金メダルを獲得する。10キロ個人スタートで、29分39.7秒のタイムを記録した。
バギヤンのモットーは、「決して立ち止まらないこと」。
コーチのトゥルビン氏も、彼女の可能性を信じている。
「ナスチャは、すべてのメダルを取ることだってできる選手です。」