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人生で一度は見ておきたいチュコトカの名所10選
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誰でもパイオニアになれる場所、それがチュコトカ(チュクチ自治管区)だ。このロシアの最果ての地方には、果てしないツンドラも、一年中雪に覆われた山も、温泉も、海洋生物もいる。そしてあなたは、きっとまだここに来たことがない。
1. アナディリ
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この地方を旅するなら、そのスタート地点はたいていチュクチ自治管区の首都アナディリだ。人口1万5000人の小さな街だが、街並みはロシアで最も色鮮やかだろう。
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チュコトカの気候は非常に厳しい。曇りがちで、突き抜けるような強風が吹き、夏はとても短く寒い。植物はほとんど育たない。
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少しでも人々の気分を高めるため、集落のすべての家屋がさまざまな色で塗られている。アナディリでは壮大な北極風の壁画(北方をテーマにした大きなグラフィッティ)も楽しめる。月に座るシロクマや、狡猾にウィンクするトナカイ、セイウチの抽象画などだ。
2. アナディリ潟
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アナディリ市はベーリング海の湾にあるアナディリ潟の上にある。ここは驚きの場所だ。アナディリ潟にはたくさんのベルーガ(北極に住むハクジラ類の一種、別名シロイルカ)やアザラシがおり、通りかかる旅行者に喜んでポーズを取ってくれる。恐れる必要はない。ただ記念撮影がしたいだけなのだ。
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3. ベーリンギア国立公園
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海からはヒューヒューという音だけが聞こえる。ベーリング海の沿岸部と島嶼部を包括するベーリンギア国立公園はまさに驚くべき場所だ。公園のある場所では大きな牙を持つ本物のセイウチが好んで集まって大声を出している。またある場所では遊び好きのシャチが集まって旅行者に尾を見せている。またある場所にはクジラやアザラシが集まっている。
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ベーリング海には世界最長の砂嘴の一つ、全長60キロメートルのメーチクィン砂嘴もある。ここの砂は温かい海の砂のようだと海上クルーズを企画するアレクサンドル・エンダリツェフ氏は話す。「ここはアナディリとエグヴェキノトの間で入り江に入って風をよけることのできる唯一の場所だ」。
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現在この砂嘴には自治管区政府の支援で現代的な観光施設が建設中で、いずれそこからセイウチやクジラを観察できるようになる。
4. デジニョフ岬
地上の果ては、あなたがまさに想像する通りのものだ。岩がむき出しの高く切り立った崖が凍てつく海に突き出している。デジニョフ岬はロシア及びユーラシアの最東端だ。
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ここにはコサックのセミョン・デジニョフを記念する灯台が立っている。1648年、デジニョフ率いる探検隊が初めて大陸の端に到達した。
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天気が良ければここからベーリング海峡を隔ててダイオミード諸島(グヴォーズデフ諸島)が見える。諸島の間に米露の国境線が通っている。
5. 廃村ナウカン
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デジニョフ峠のそばには古いエスキモーの村ナウカンがある。20世紀半ばまではここがロシア最東端の集落だった(現在の最東端は22キロメートル西のウエレン村)。
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1958年に住民の退去が行われるまで(村は米国との国境に近すぎた)、ここには約400人が暮らしていた。現在では民家の石の骨組みしか残っていない。
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しかし何より印象的なのは、地面に埋め込まれた巨大なクジラの顎だ。かつてこの顎はボートを掛けるのに使われていた。こうした場所は神聖と考えられており、罵り合ったり、大声で話してもならない。
6. 180度経線
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「昨日」と「今日」(そして東半球と西半球)を分ける経線が大陸部を通るのは、南極大陸とユーラシア大陸のチュクチ半島だけだ。公式の日付変更線は、ロシアと米国の海上の国境があるダイオミード諸島の間にずれているが、地理学的には180度経線はエグヴェキノトから約60キロメートル離れたここを通っている。
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北極圏の南端と180度経線の交差点にあるコンクリートの記念碑「太陽のシンボル」は太陽の縮小版だ。「大きさは実物の4億分の1で、3㍍48㌢だ」と作者で写真家のイーダ・タウベは話す。
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「今日」は記念碑の向こうの山の上にあり、「昨日」はその前にある。ここに来たなら、「未来」か「過去」から挨拶をしない手はない。
7. 北極圏のアーチ
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北極圏のアーチは1981年に現地住民によってエグヴェキノトの28キロメートル離れた所に設置された。金属の格子でできた巨大なアーチは廃村イウリチンに続く道に架かっている。
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数年前、ロシア人地理学者が座標を計算し直したところ、北極圏の南端と道路の交差点は実際にはこのアーチから道沿いに数キロメートル離れた所、山の麓だと分かった。アーチを移動させるのは不可能だと分かったが、代わりに記念柱が建てられた。
8. エグヴェキノト村
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「チュコトカのスイス」――アナディリから600キロメートル離れた所にあるエグヴェキノト村を現地住民はそう呼ぶ。この集落(人口3000人強)は山の輪に囲まれた穏やかな入り江にある。風景は実際アルプスに似ている。
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違いと言えば、永久凍土と寒冷な気候くらいだ。ここの年間を通して平均気温が摂氏マイナス5度だ。
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しかし、ここには山スキーのコースと雰囲気の良いカフェがある。またここでは、空間のパラドックスを体験できる。エグヴェキノトは180度経線から数十キロメートル東にあり、したがってここに来れば、地理学的には太平洋を渡ることなく西半球にいることになる。
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9. 基幹民族の村ロリノ
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ロリノ村はチュコトカ最大の村で、住民(わずか1500人)のおよそ9割は基幹民族で、漁師である。
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彼らは極めて一般的なアパートに住んでおり、衛星放送を視聴している。子供たちは学校に通っているが、伝統的な生業にも従事している。獲物は村の住民全員で分け合う。
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現在では漁師たちは現代的なボートに乗って海に出るが、毎年夏に手製のバイダーラ(セイウチの皮を張った舟)に乗って競争し、民族の祭「ベーリンギア」を開く。
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10. ロリノ温泉
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永久凍土に温泉があるとは、意外ではないだろうか。チュコトカではこうした場所が計10ヶ所あるが、最も有名でアクセスしやすいのはロリノ村から15キロメートル離れた所にあるものだ。ロリノ温泉の浴場は20世紀半ばに設置され、水からはラドンが検出されている。
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ラドンはウラン鉱床の副産物として形成される放射性のガスによるもので、幅広い強力な治癒効能を持つ。ただその放射能は子供や若者の健康を害する可能性があり、そのためここはもっぱら高齢者がアンチエイジングの手段として、とりわけ運動器の治療に利用している。温泉の水温は約40度で、所により60度に達する。温泉に入られるのは最大で15分だ。
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