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画家が描くロシアのおとぎ話(写真特集)
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19世紀の末、ロシアでは「ロシア・スタイル」あるいは「ネオロシア・スタイル」が流行り、さまざまなジャンルの芸術家が自らの「ルーツ」に目を向け、フォークロアやルボーク(民衆版画)にインスピレーションを見出した。おとぎ話のモチーフは建築にも(古い御殿のような建物が作られた)、音楽にも、そして絵画にも浸透した。この頃、ヨーロッパ全土で、演劇の世界でロシアのテーマを取り入れたあの有名なセルゲイ・ディアギレフの「ロシアン・シーズン」が大人気を博した。
ヴィクトル・ヴァスネツォフ(1848〜1926)は絵画における「ネオロシア」スタイルの創始者と考えられている。ヴァスネツォフは写実主義画家としてキャリアをスタートしたが、モダニズム画家への長い道のりを歩んだ。
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「おとぎ話」をテーマにした絵画で2番目に有名な画家といえば、イワン・ビリビン(1876〜1942)。ビリビンは舞台美術家として活躍し、ロシアをテーマにしたオペラの美術を手がけた。アレクサンドル・ボロディンの「イーゴリ公」、イーゴリ・ストラヴィンスキーの「火の鳥」、ニコライ・リムスキー=コルサコフの「金鶏」、「サトコ」、ミハイル・グリンカの「ルスランとリュドミラ」などである。
しかし、ビリビンは何よりも、ロシアのおとぎ話、とりわけアレクサンドル・プーシキンの民話を基に書いたおとぎ話への挿絵画家として歴史に名を残した。
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おとぎ話というテーマにはその他多くの画家が取り組んだ。たとえば、ヴィクトル・ヴァスネツォフとの出会に影響を受けたイリヤ・レーピンは中世ロシアの叙事詩ブィリーナの登場人物「サトコ」を描いた有名な作品を描き上げた。「サトコ」は、花嫁を視察するため、海の王子の元に行くため海底に向かう。
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モダニズムと象徴主義に熱中したミハイル・ヴルーベリ(1856〜1910)は聖書のストーリーや堕天使、神秘学をテーマにしただけでなく、おとぎ話のモチーフでも作品を描いた。妻のナジェージダ・ザベラ=ヴルーベリは、有名なオペラ歌手で、ディアギレフがロシア的なテーマで演出した「サトコ」や「サルタン王ものがたり」に出演した。こうした作品の影響を受けて、ヴルーベリはおとぎ話シリーズを描いたと言われる。
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有名な舞台美術家のレオン・バクスト(1866〜1924)はイーゴリ・ストラヴィンスキーのバレエ「火の鳥」のデザインで有名になった。このバレエの初演はパリのグランド・オペラで行われた。
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おとぎ話のテーマは、舞台美術家で本の挿絵作家として有名なセルゲイ・マリュチン(1859〜1937年)の作品にも登場する。
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革命後、細密画で有名なパレフ出身のイコン画家らはイコンや宗教画を描いてはならなくなった。そこで彼らはロシアのおとぎ話に方向転換し、「古い絵画の協同組合」を作った。現在、その絵はイコンのための板ではなく、ラッカー塗りの小箱に描かれている。
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