
ロシアの奇妙な鉄道駅名9選

1 – 「Московское море」モスコフスコエ・モーレ(モスクワ海)、トヴェリ州

地図を調べても、もちろん、モスクワの周辺に海など無い。では、なぜこんな駅名があるのだろうか?駅の近くには、イワニコスコエ貯水池がある。長さ約30km、幅5kmにも及ぶ大貯水池だ。その大きさのため、人々の間ではモスクワ海と通称されており、それがそのまま駅名になったものである。
2 –「Обское море 」 オブスコエ・モーレ(オビ海)、ノヴォシビルスク州

ノヴォシビルスク郊外の駅名の由来も、よく似ている。地元の人々はオビ川に繋がるノヴォシビルスク貯水池をオビ海と呼ぶ。こちらもまた、アルタイ地方まで200kmに渡って伸びる巨大貯水池だ。
3 – 「Лось」ロシ(ヘラジカ)、モスクワ市

モスクワ東部のとある駅の駅名表示板には、そのまんま、「ロシ(ヘラジカ)」とある。1929年、ロシノオストロフスク市(現在はモスクワのロシノオストロフスキー地区)に隣接して開業した駅だが、同市はロシヌイ島(ヘラジカ島)自然公園にちなんで名がついた町だ。ここはモスクワ最大級の森林地帯であり、ヘラジカが多数生息している。
4 - 「Лев Толстой」レフ・トルストイ(人名)、リペツク州

1910年、この駅(当時はアスタポヴォ駅)は作家レフ・トルストイの終焉の地となった。旅の道中で風邪をひき、この駅で降りて、数日を駅長の宿舎で過ごしたのち、息を引き取った。
トルストイ終焉の地として遺すべく、宿舎の内部は保存され、駅名は文豪の名に変更された。プラットフォームの時計は、トルストイの死亡時刻を指し示して止まっている。1946年には、駅の中に博物館もオープンした。
5 –「Ляля」リャーリャ、スヴェルドロフスク州

ノーヴァヤ・リャーリャという町名同様、駅名は川の名に由来する。マンシ人の言葉で対立者や敵を意味するが、響きは何ともかわいらしい。
6 – 「Шуба」シューバ(毛皮の外套)、イルクーツク州

地元民の、こんなジョークがある:
「おいニューラ、シューバを買ってこい、シマが近いぞ」
この一文に、3つも駅名が含まれている。ニューラ(女性の名)、シューバ(外套)、そしてジマー(冬)である。ここで言うシューバは、毛皮の外套のことではなく、サモエード諸語で「水」や「ハコヤナギの木」を意味する。
7 – 「Панки」パンキ(パンク集団)、モスクワ州

リュベルツィ市の駅は、「パンク」の複数形である「パンキ」という奇妙な駅名である。かつてこの場所には同名の村があり、のちにリュベルツィ市に吸収された。パンキとは、Pan、つまり小地主の集団のことである。宮廷に近い立場の共同体で、村に個別の集団を形成していた。地元民がPanの集団という意味で「パンキ」と呼んだことに由来する。
8 –「Дно」 ドノー(どん底)、プスコフ州

ロシア西部、ドノー市にある駅だ。かつて、「ドノー」は単に低地を意味した。実際、すぐ近くは沼地である。
9 –「Ерофей Павлович」 イェロフェイ・パヴロヴィチ(人名)、アムール州

シベリア鉄道にある駅。東部シベリアと極東を探索したロシアの探検家イェロフェイ・パヴロヴィチ・ハバーロフにちなむ。極東の大都市ハバロフスクも、彼にちなんで名づけられた。
BONUS: シベリアには、冬を意味するジマーという町がある。極圏には、アフリカンダという地名も。その他、ロシア各地の不思議地名を集めた記事はこちら