現代美術、チェボクサルの劇場に現る(写真特集)

チュヴァシ現代美術ビエンナーレ マリア・プラクシーナ(ホー・グイ)とT・プラクシーナ(エカテリンブルク)、「ママのフォルダ」、インスタレーション、2022年
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ
人口50万人のチェボクサル市には美術館が1つも無いが、現代美術チュヴァシ・ビエンナーレは第2回目の開催となる。市民は、「家」という概念の様々な解釈に興味津々だ。

 「ここには美術館も現代美術センターもなければ、コレクターもいません」

 と、ビエンナーレの創始者であるユリア・コンスタンチノワさんは語る。かつてアート・マネジメントの勉強のためにチェボクサルからモスクワに移り、その後は広告代理店で働いた彼女だが、自分自身で立ち上げる大型プロジェクトの構想は燻り続けていた。

チュヴァシ現代美術ビエンナーレ カミル&サニヤ・サジェンスキー(モスクワ/タシケント、モスクワ/ニジニ・ノヴゴロド)、「Across the Street」、 インスタレーション、2024-2025年
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ

 「私は良い先生方に恵まれました。少数のグループでも、大規模な展覧会を企画できるという確信を与えてもらいました」

 と、コンスタンチノワさん。そしてチャンスは巡ってきた。文化イニシアチブ大統領財団からの補助金が下りたのである。彼女はチュヴァシ共和国政府宛にビエンナーレ開催の提案書を送り、すぐに「会って相談しましょう」との返事を得た。提案は採用され、2022年11月に第1回目のビエンナーレが開催された。第2回目は大きく遅れたが、2つの主要会場を使い、特別プログラムも実施し、市民からの熱い歓迎の中での開催となった。

チュヴァシ現代美術ビエンナーレ オリャ・マフノ(モスクワ)、「もう一度?」、トータル・インスタレーション、2023年
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ

 ビエンナーレのメイン会場となったのは、おそらく市内で最も美しい建築物であろう、イワノフ記念チュヴァシ・ドラマ劇場。ヴォルガ川のほとりに建てられた、ソビエト古典主義風の建築である。ビエンナーレの運営陣によると、劇場側からメイン会場として提供したいと申し出があったという。劇場の着眼点は大当たりだったと言える。それまで市民が「よく聞くけど、あまり見たことは無い」という現代美術の展示は、劇場に多くの若者を呼び寄せると期待された。展示のために観客席その他のスペースを気前よく提供した結果、開催初日から「wow!」という感嘆の声は展示品の鑑賞からも、館内空間の鑑賞からも絶え間なく聞かれた。また、あらゆる場所に顔を出すことでお馴染みの地元のおばあちゃん方も、勝手知ったる劇場で興味深く作品を見て回っていた。モーターを付けて円形のスペースをぐるぐる回る木の根という、一見珍妙なインスタレーションも受け入れられたようである。

チュヴァシ現代美術ビエンナーレ アイグル・アクタエワ(カザン)、「7:30」、インスタレーション、2025年
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ

 今回のビエンナーレのテーマは、「7つの翼についての家」。チュヴァシの詩人ワレム・アフンの作品から引用された題で、チュヴァシの遊牧民が用いたユルト(ゲル)を詩的に美しく表現したものである。直接的にも隠喩的にも、家について考えを巡らすこの企画にはロシア中から約60人のアーティストが呼ばれた。そのうち1/4はチュヴァシから招待されている。

チュヴァシ現代美術ビエンナーレ オリャ・マフノ(モスクワ)、「声」、インスタレーション、2025年
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ

 それでは、アーティストたちの作品を見ていこう。

チュヴァシ現代美術ビエンナーレ ナスティア・ジェガル(チェボクサリ)、「饗宴」、インスタレーション、2025年
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ マリーナ・アライエワ(イジェフスク)、「低木」、インスタレーション、ジン、2025年;絵画を背景に:リディア・イルチュク(モスクワ/チェボクサリ)、「蜂の巣」、絵画、2023年
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ イリーナ・イヴァニコワ(サンクトペテルブルク)、「パッケージング」、写真インスタレーション、2020ー2025年
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ グリヤ・カビロワ(チェボクサリ)、「ボディ・ハウス」、インスタレーション、2025年
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ オレシャ・ヴォルコワ(チェボクサリ)、3つの太陽、絵画、インスタレーション、2025年
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ ユマ(タチアナ・アンドレーエワ)(ノヴォチェボクサルスク)、「フルランタシュ」カーテン、2025年
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ サーシャ・コチェトコワ(モスクワ/パリ)、「もしあなたがプラスチックだったら」、ビデオアート、サウンドアート、2024年
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ ウラジーミル&アリョーナ・バンブリン(チェボクサリ)、インスタレーション、「Variations of Memory Tetragality」、2025年
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ コンスタンチン・ロスリヤコフ(チュメン)、「土を求めて」、インスタレーション、2025年
チュヴァシ現代美術ビエンナーレ

第2回チュヴァシ現代美術ビエンナーレは2025年8月10日まで開催中。詳しくは公式サイトを参照

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