
現代美術、チェボクサルの劇場に現る(写真特集)

「ここには美術館も現代美術センターもなければ、コレクターもいません」
と、ビエンナーレの創始者であるユリア・コンスタンチノワさんは語る。かつてアート・マネジメントの勉強のためにチェボクサルからモスクワに移り、その後は広告代理店で働いた彼女だが、自分自身で立ち上げる大型プロジェクトの構想は燻り続けていた。

「私は良い先生方に恵まれました。少数のグループでも、大規模な展覧会を企画できるという確信を与えてもらいました」
と、コンスタンチノワさん。そしてチャンスは巡ってきた。文化イニシアチブ大統領財団からの補助金が下りたのである。彼女はチュヴァシ共和国政府宛にビエンナーレ開催の提案書を送り、すぐに「会って相談しましょう」との返事を得た。提案は採用され、2022年11月に第1回目のビエンナーレが開催された。第2回目は大きく遅れたが、2つの主要会場を使い、特別プログラムも実施し、市民からの熱い歓迎の中での開催となった。

ビエンナーレのメイン会場となったのは、おそらく市内で最も美しい建築物であろう、イワノフ記念チュヴァシ・ドラマ劇場。ヴォルガ川のほとりに建てられた、ソビエト古典主義風の建築である。ビエンナーレの運営陣によると、劇場側からメイン会場として提供したいと申し出があったという。劇場の着眼点は大当たりだったと言える。それまで市民が「よく聞くけど、あまり見たことは無い」という現代美術の展示は、劇場に多くの若者を呼び寄せると期待された。展示のために観客席その他のスペースを気前よく提供した結果、開催初日から「wow!」という感嘆の声は展示品の鑑賞からも、館内空間の鑑賞からも絶え間なく聞かれた。また、あらゆる場所に顔を出すことでお馴染みの地元のおばあちゃん方も、勝手知ったる劇場で興味深く作品を見て回っていた。モーターを付けて円形のスペースをぐるぐる回る木の根という、一見珍妙なインスタレーションも受け入れられたようである。

今回のビエンナーレのテーマは、「7つの翼についての家」。チュヴァシの詩人ワレム・アフンの作品から引用された題で、チュヴァシの遊牧民が用いたユルト(ゲル)を詩的に美しく表現したものである。直接的にも隠喩的にも、家について考えを巡らすこの企画にはロシア中から約60人のアーティストが呼ばれた。そのうち1/4はチュヴァシから招待されている。

それでは、アーティストたちの作品を見ていこう。









第2回チュヴァシ現代美術ビエンナーレは2025年8月10日まで開催中。詳しくは公式サイトを参照