ロシア映画に登場する9人の外国人俳優

Aleksei Uchitel/TPO Rok, 2018年
Aleksei Uchitel/TPO Rok, 2018年
世界の多くの国の俳優がロシア映画に出演している。中でも代表的な役者たちを見てみよう。

1.ブラク・オズチヴィト

Karen Zakharov/Bar Production, Ivi, 2024年
Karen Zakharov/Bar Production, Ivi, 2024年

 トルコドラマのファンにとってのナンバーワンアイドルが2024年、ロシア映画界に進出。ロマコメ『Я к тебе надолго(長居させてもらうよ)』で、自分自身を演じた。さらに、年末恒例の人気ドラマシリーズ『Ёлки(ヨールキ)』の新作にも、やはり自分自身役で出演して注目を集めた。

2.ミロシュ・ビコヴィッチ

Klim Shipenko/GMP KIT, MEM Cinema Production, Yellow, Black & White, 2019年
Klim Shipenko/GMP KIT, MEM Cinema Production, Yellow, Black & White, 2019年

 セルビア出身のビコヴィッチのロシア映画初出演は、イワン・ブーニンの原作と日記をもとにニキータ・ミハルコフが監督した『Солнечный удар(日射病)』だった。ミハルコフは2011年のモスクワ映画祭で、映画『Montevideo, God Bless You!』(第1回FIFAワールドカップに出場したユーゴスラビアを描いた作品)の披露のため出席していたビコヴィッチに目を付けた。以降、ビコヴィッチのフィルモグラフィーにはロシアの映画やドラマが次々と追加されていった。代表的なものでは、19世紀の村に「タイムスリップ」させられた資産家のドラ息子を描くコメディ『Холоп(Serf)』、フィギュアスケートを題材とした『Лёд(Ice)』、レトロ推理モノの『Красный шелк(Red Silk)』、ドラマでは『Магомаев(マゴマエフ)』、『Отель Элеон(ホテル・エレオン)』などの出演作がある。

3.アウグスト・ディール

Mikhail Lokshin/AMEDIA, Profit, Mars Media Entertainment, 2023年
Mikhail Lokshin/AMEDIA, Profit, Mars Media Entertainment, 2023年

 ディールのロシア映画出演は、近年のロシア映画業界でも最大級の話題の1つだった。ディールが演じた文学上のキャラクターが、イメージにぴったりだった事も一因だろう。作中のベルリオーズとベズドームヌイに続いて観客も、このキャラクターが例の謎の外国人だとすぐに察せた。暑い夕暮れにパトリアルシュ公園に現れた、『巨匠とマルガリータ』のあのヴォランドである。

4.ダニエル・バーンズ

Igor Kopylov/Marmoth-film, 2020年
Igor Kopylov/Marmoth-film, 2020年

 米国インディアナ生まれ。2012年にバトラー大を卒業後、演劇講師の勧めでロシア行きを決断。当初の滞在予定は1年半だったが、思いがけずロシア生活は長引いた。モスクワのGITIS(国立舞台芸術大学)で学ぶかたわらロシア語を勉強し、やがてCMやドラマ、映画に出演するようになる。最近では、映画『Нюрнберг(ニュルンベルグ)』、ドラマ『Карамора(Karamora)』といった出演作がある。また、英語を学ぶ人を対象にしたYoutubeチャンネルも開設している。

5.ペータル・ゼカヴィツァ

Anton Megerdichev/Online-cinema START, Yellow, Black & White , 2022年
Anton Megerdichev/Online-cinema START, Yellow, Black & White , 2022年

 ベオグラード生まれ。ハワイで学び、ニューヨークで働いた後、2000年代初頭にロシアに渡った。モスクワではマヤコフスキー劇場とタガンカ劇場で舞台に立ったが、映画やドラマ出演で知名度を上げた。デカブリストの乱を描いた『Союз спасения(Union of Salvation)』ではセミョノフスキー連隊長フョードル・シュワルツの役を、『Царская прививка(皇帝の種痘)』ではエカテリーナ2世とパヴェル皇太子に種痘を施したトマス・ディムズデール医師を演じた。

6.マルコ・ディネッリ

Anario Mamedov/GMP KIT, Kit studio, Bumerang cinema company, 2018年
Anario Mamedov/GMP KIT, Kit studio, Bumerang cinema company, 2018年

 イタリア出身の彼をロシアと結び付けたのは映画ではなく、ロシア語であった。ペルージャ大学でロシア語を学び、1990年代はモスクワの大学で教鞭を取っていた。ユーリー・マムレーエフ、セルゲイ・ドヴラートフらの作品のイタリア語訳という実績もある。映画デビューは、『Вий 2: Тайна печати дракона(ヴィイ2:レジェンド・オブ・ドラゴン 鉄仮面と龍の秘宝)』でのチョイ役。現在の出演歴は、『ホテル・エレオン』、『Красная Поляна(クラスナヤ・ポリャーナ)』、『Беспринципные(無節操な連中)』といったドラマシリーズがある。

7.木下順介

Valery Fokin/Interfest, Revolutsia Film, 2021年
Valery Fokin/Interfest, Revolutsia Film, 2021年

 日本の俳優・監督の木下順介が妹に招かれて初めてモスクワに来たのは2010年のこと。当初は言葉も分からなかったが、モスクワの街に惚れこみ、以後15年暮らし続けている。ロシアで制作したドキュメンタリー映画の第1作は、ボリショイ劇場初の外国人ソリストであるバレエダンサー岩田守弘を採り上げたものだった。フィルモグラフィーは、映画『Чемпион мира(Champion of the World)』(アレクセイ・シドロフ監督)でのフィリピンのチェス選手ロレンシオ・カンポマネス役、『Петрополис(Petrópolis)』(ワレリー・フォーキン監督)での国連職員オジリ役、『Мистер Нокаут(Mister Knockout)』のスポーツコメンテーター役などがある。

8.ヴォルフガング・チェルニー

Vladimir Raksha/Lunapark, Plus Stuido, 2023年
Vladimir Raksha/Lunapark, Plus Stuido, 2023年

 オーストリア出身のチェルニーのフィルモグラフィーには、ハリウッドの『ミッション・インポッシブル』シリーズもあれば、ロシアの『Последний богатырь(Last Knight)』での勇者アリョーシャ・ポポーヴィチ役もある。その他ロシアの作品では、ミステリアスなドラマシリーズ『Иные(Others)』、映画『Легенда о самбо(Legends of Sambo)』、『Золото Умальты(ウマリタの黄金)』などがある。

9.ラース・アイディンガー

Alexei Uchitel/TPO Rok, 2018年
Alexei Uchitel/TPO Rok, 2018年

 若き日のニコライ2世とバレリーナのマチルダ・クシェシンスカヤの恋愛を描いた2017年の映画『Матильда(マチルダ:禁断の恋)』で、アイディンガーはニコライ・アレクサンドロヴィチ皇太子(後のニコライ2世)役を演じた。アレクセイ・ウチーチェリ監督によるこの作品は激しい議論を呼び、皇帝とマチルダの関係について自由すぎる解釈を行ったとして、上映禁止を求める声さえ上がった。

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