「ルースキー・ミール」が世界にロシア語を広める

ルースキー・ミール財団 第17回「ルースキー・ミール」総会には100か国以上から専門家や文化人が集まった
ルースキー・ミール財団
ロシア語は世界で最も話者数の多い言語トップ10に入る。約2億5300万人がロシア語を話すとされており、さらにロシア語を広めるべく、熱心に取り組む人達がいる。

 「モスフィルム」の映画劇場は超満員。さまざまな民族の人々の間に話は止まず、にぎやかそのもの。彼らの出身国は多様だが、共通するのはロシア文化愛と、ロシア語を話すということだ。

 開催されたのは、「ルースキー・ミール(ロシア世界)」総会。参加者は、100か国以上から集まった専門家たち。ロシア語教師、翻訳者、通訳者、言語学者、ジャーナリストなどである。

「ルースキー・ミール」とは?

 この言葉を目にする機会は増えつつある。果たして「ロシア世界」は、「ロシア語の世界」とどう違うのか?

 「“ロシア世界”は、ロシア語よりも広範な概念です。年齢や国境に関係なく、私達が愛するもの。子供達に伝えていきたい、私達の価値観そのものです」

 と、外国語としてのロシア語教育を専門とする教育学博士エリザヴェータ・ハムラエワ氏は語る。

 ロシア世界への帰属は、出身地に左右されるものではない。

 「現代ロシア語の創始者であるアレクサンドル・プーシキンが、祖母はドイツ人、祖父がエチオピア人だったことは、象徴的と言えるでしょう。また、『大ロシア語詳解辞典』を編纂したヴラジーミル・ダーリはデンマーク人でした。しかしそれは、彼らがロシア世界の重要な一員となる障害ではなかったのです」

 と指摘するのは、著名な映画監督にしてモスフィルム所長のカレン・シャフナザロフ氏。

エフゲニー・ビヤトフ / Sputnik 映画監督カレン・シャフナザーロフ
エフゲニー・ビヤトフ / Sputnik

 「ルースキー・ミール」は、世界中でのロシア語の普及と支援を目的とした財団の名称である。総会は今年で17回目を迎えたが、毎年、世界中からロシア語の普及に努める人々が集う。彼らは皆、母国でロシア語を教え、ロシア語学校やロシアの作家に関する博物館を開設し、展示会や文学・映画の集いを開催するなど前線で活躍している。

 ロシア外務大臣で、同財団理事会会長でもあるセルゲイ・ラヴロフ氏は、

エフゲニー・ビヤトフ / Sputnik これらの外国人たちは皆、見事なロシア語を話す
エフゲニー・ビヤトフ / Sputnik

 「ロシア文明の国境を越えた文化的豊かさを守り、向上させる活動に貢献する人々を、このフォーラムが再び結集させたことは喜ばしい。そしてロシア語は、我々の文明的結束において最も重要なファクターだ」

 とコメントした。

最重要課題は、ロシア語の普及

 ルースキー・ミール財団とその監査会は現在、ロシア語の普及を主目的とする多様な機関、団体、個人を統合している。

 ロシア語の支援はロシアの国家政策の優先事項の1つであると、ロシア連邦大統領顧問のエレーナ・ヤンポリスカヤ氏は語る。彼女によると、今年はロシアの国宝の1つとしてロシア語を認定する戦略文書も採択されたという。

エフゲニー・ビヤトフ / Sputnik チャドのロシア・ハウス館長、アフマト・イブラヒム・サフィア
エフゲニー・ビヤトフ / Sputnik

 総会では、ロシア語普及活動への活発な取り組みを評価された複数のロシア専門家と外交官が表象された。インドの在トリヴァンドラム名誉領事ラティシュ・ナイル氏、ヨルダンのジャーナリズム学部教授フサム・アリ・アトゥム氏、テヘラン大学ロシアセンター長ザフラ・モハマディ氏、アルゼンチンの翻訳家アレハンドロ・ゴンサレス氏らである。

 さらに総会ではルースキー・ミール財団と国立プーシキン記念ロシア語大学の共催による外国人ロシア語教師国際プロフェッショナル技能コンクールの表彰式も行われた。このコンクールには30か国から600名を超える語学教師が参加している。

世界各国からのロシア語

 総会の壇上から、時おり外国なまりも混じったロシア語が聞こえてくる。授賞式は、演劇大学の外国人学生でギリシャ出身のエレーナ・アスラニディさんと、セルビア出身のジョルジア・イヴィチさんの司会によって進行した。聴衆のためにはソビエト映画の楽曲が演奏されたが、これもモスクワ音楽院の外国人学生オーケストラによるものだ。

 スコットランド出身のミュージシャンであるハリー・ジョンストンさんは、プロコフィエフの音楽に導かれてロシアにやってきたと言う。今では自由にロシア語を操れるようになった。

エフゲニー・ビヤトフ / Sputnik モスクワ音楽院の外国人留学生によるオーケストラが、ソ連映画の音楽を演奏した。
エフゲニー・ビヤトフ / Sputnik

 また総会では、国際ロシア語オリンピックの表彰式も行われた。これもまた、ルースキー・ミール財団と国立プーシキン記念ロシア語大学の共催による大会である。

 ロシア語オリンピックの規模が証明するように、ロシア語に対する国際的な関心は今も揺るぎない。オンライン予選には72か国から3000人以上の高等学校生が参加し、対面式の決勝大会には26か国から30人以上が進んだ。参加者の出身国は中国、ハンガリー、ベトナム、モンテネグロ、そして旧ソ連諸国など、幅広い。

<