ロシアで愛されているパン15種
1.ボロディンスキー
ロシアでは、ライ麦入りの黒パンの人気が非常に高い。(詳しくはこちらの記事を参照)。特に有名なのが、コリアンダー入りの香り高いボロディンスキーと呼ばれるブハンカ(一斤のパンの意、レンガを意味するキルピチとも)。19世紀に誕生したパンだが、現在のレシピは1933年に開発されたもの。ソ連時代から現在に至るまで、ボロディンスキーにバターと塩を載せただけのシンプルなレシピこそが至高のオープンサンドだと言う人は非常に多い。
2.ナレズノイ
表皮に斜めの切れ目が入った、昔ながらの棒状の白パン。1938年にレシピが開発され、ソ連全土のパン工場で焼かれた。店舗に搬入される段階では、焼きたてでまだ温かいことも多かった。
3.ダルニツキー
香ばしい表皮と、主張しない控え目な味わいが特徴の昔ながらのパン。1980年代からライ麦(60%)と小麦(40%)を混ぜて焼かれるようになった。ボルシチによく合うとされ、バターやひまわり油との相性も良い。
4.ストリチヌイ
こちらも定番のライ麦・小麦の混成パンだが、ダルニツキーと比べると色も香りも濃いめ。ダルニツキーより丸っこく平べったい形が特徴。
5.カラヴァイ
祝いの席の主役。豪華な飾りつけが映える小麦パンで、古くから婚礼のために焼かれたり、客人を出迎える際にたずさえたりする。
6.ザヴァルノイ(酵母不使用パン)
酵母を使用せず、サワードウを使って作る黒パン。この製法が、水分を多く含んだ、弾力と甘酸っぱい風味を生む。日持ちがするのも特徴だ。
7.ゼルノヴォイ
栄養価と食べ応えアップのため、種子や雑穀、フスマなどを加えた黒パン。味はボロディンスキーに近い。
8.カレリスキー
ライ麦粉と小麦粉を混ぜた生地に、コリアンダー、レーズン、果物の砂糖漬けもしくは干しアンズを加える。ボロディンスキーを甘くしたような味である。大量生産されるようになったのは20世紀半ばごろで、それまではカレリア地方の特産だった。名前も、カレリアに由来する。
9.リジュスキー
帝政時代に販売されるようになったパンで、当時から人気が高かった。統一されたレシピが登場するのはソ連時代。キャラウェイと糖蜜を加えた黒パンの一種で、香りが良く、スッキリした味わいが際立つ。
10.ポドヴィー
火床(ポド)で型を用いずに焼かれるパン。そのため形はやや歪だが、表皮は満遍なくカリッとしており、内部は非常に香り高い。ライ麦から作る場合も、小麦から作る場合もある。
11.ジート
ジート(жито)は、古語では「生命」を意味した。そして昔も今も、この言葉は穀物由来(大麦、小麦、ライ麦)またはサワードウで作る白パンと黒パンの名でもある。
12.スヴェルドロフスカヤ・スロイカ
シュトロイゼルをふりかけた大きな折り込みパイ生地のパン。1960年代にエカテリンブルグ(旧スヴェルドロフスク)で生まれ、その後全国に広まって人気を得た。
13.サイカ(ロールパン)
古くからある白パンで、こね粉に熱湯をかけて作った生地を並べて焼く。非常にやわらかく、やや甘みがある。
14.プシェニチヌイ(小麦パン)
ロシア人なら誰でも、子供の頃からお馴染みのパン。目の詰まった生地のいわゆる「キルピチ(レンガ)」で、ロシア全土どこの店にも並んでいる。
15.ゴルチチヌイ(マスタード)
ソ連でパン生地にマスタードを加えるようになったのは香りを良くするためで、1940年代から始まった。マスタードパウダーやマスタードオイル(現在は後者が主流)を加えたパンが登場するのは1980年代で、生地をよりふっくらさせ、栄養価も高くなる。形はさまざまだが、バゲット型が多い。