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ロシア語の「ナンバーワン」な言葉7選

ロシア・ナビ(OpenAIによって作成)
ロシア語で最も長い言葉、最も美しい言葉、最もよく使われる言葉とは何だろうか。言語学者たちが解説する。

1.最も長い言葉

ロシア・ナビ(OpenAIによって作成)

 プーシキン記念ロシア語大学の一般言語学・ロシア語学講座主任、パーヴェル・カトゥイシェフが挙げたのは、55文字からなる「тетрагидропиранилциклопентилтетрагидропиридопиридиновые」という言葉だ。

 この言葉は、ある化合物の特許の名称に使われている。

 これまでにギネス世界記録に登録されたロシア語の長い言葉には、 

 「превысокомногорассмотрительствующий」(極めて慎重で思慮深い、35文字)や 

 「рентгеноэлектрокардиографического」(X線心電図検査に関する、33文字)などがある。

 また、直系の先祖や子孫との血縁関係を表す名詞なら、理論上、いくらでも長い言葉を作ることができる。接頭辞「пра-」(祖先や子孫の世代をさらにさかのぼったり、下ったりすることを表す)を繰り返し付け加えればよいからだ。

 例えば、「прапрапрадедушка」(何代も前の祖父)や「прапрапрапрапраправнук」(何代も後の孫)といった言葉である。

2.最も難しい言葉

ロシア・ナビ(OpenAIによって作成)

 イギリスの作家ルイス・キャロルによれば、ロシア語で最も難しい言葉は「защищающихся」(自分の身を守っている人々、あるいは防御している人々)である。

 キャロルは『1867年ロシア旅行日記』の中で、次のように記している。

 「ロシア語に特徴的な、途方もなく長い単語の例として、彼(サンクトペテルブルク在住のイギリス人)は、次の言葉を書いて見せてくれた。защищающихся という言葉で、これを英語のアルファベットで表記すると、Zashtsheeshtschayjushtsheekhsya となる」

 しかし、言語学者たちは、言葉の難しさはあくまで相対的なものだと考えている。外国語を難しく感じるのは、その言語に自分の母語とは異なる特徴があるからだ。

 例えば、日本語やマオリ語のように母音を多用する言語の話者にとっては、ロシア語に特徴的な子音の連続が難しく感じられることがある。

 「взбрыкнуть」(突然跳ね上がる、後ろ脚で蹴り上げる)という言葉の冒頭にある「взбр」のような子音の連続が、その一例だ。

 しかし、セルビア語やチェコ語の話者にとっては、こうした子音の連続は特に難しいものではない。

3.最もロシア語らしい言葉

ロシア・ナビ(OpenAIによって作成)

 モスクワ大学ジャーナリズム学部のイリーナ・アレクサンドロワ准教授によれば、「тоска」(深い憂愁、やるせない悲しみ、心の渇望)は、ロシア語の中でも特に翻訳が難しい言葉の一つである。

 「ロシア語の『тоска』という言葉には、長い歴史の中でさまざまな意味が重なってきた。この言葉はインド・ヨーロッパ語に由来し、もともとは『何かが締めつける、圧迫する』という意味を持っていた。しかし、単なる深い悲しみを表す言葉ではない。そこには、心の空虚さ、失われたものへの後悔、内面から湧き上がるやるせない思いなどが含まれている」。アレクサンドロワはこう説明する。

 この言葉の翻訳の難しさについては、作家ウラジーミル・ナボコフもすでに論じていた。

 ナボコフはこのほかにも、「пошлость」(俗悪さ、精神的な浅薄さ、下品な俗物根性)や「хамство」(無礼で横柄な態度、他人の尊厳を踏みにじるような粗暴さ)といった言葉を挙げている。

 また、ロシア語の「翻訳不可能な言葉」の一つとして、「надрыв」(感情が極限まで高まり、心が引き裂かれるような精神状態)も知られている。これは特に、フョードル・ドストエフスキーの作品に特徴的な言葉だ。

4.最も多くの意味を持つ言葉

ロシア・ナビ(OpenAIによって作成)

 プーシキン記念ロシア語大学の辞書学研究室長、アレクサンドラ・オリホフスカヤによれば、ロシア語で最も多くの意味を持つ言葉は、動詞「идти」(行く、歩く、進むなど)である。

その多様な意味は、次のように分類できる。

  • 人の移動:「Девочка идёт по улице.」(少女が通りを歩いている)
  • 乗り物の移動:「Поезд идёт на Москву.」(列車がモスクワに向かっている)
  • 自然現象:「Идёт дождь.」(雨が降っている)
  • 匂い・音・光の伝わり方:「Из кухни идёт запах пирогов.」(台所からパイの匂いが漂ってくる)、「Звук идёт из наушников.」(ヘッドホンから音が聞こえる)、「Свет идёт от звёзд.」(星から光が届く)
  • 時間の経過や物事の進行:「Годы идут.」(年月が過ぎていく)、「Дела идут хорошо.」(物事が順調に進んでいる)
  • 似合うことや目標に向かって進むこと:「Тебе идёт платье.」(そのドレスはあなたによく似合う)、「Идти к цели.」(目標に向かって進む)                                         

 ただし、この動詞にいくつの意味があるかは辞書によって異なり、20から56まで幅がある。

5.最もよく使われる言葉

ロシア・ナビ(OpenAIによって作成)

 ロシア語全体で最も人気のある言葉、あるいは最も使用頻度の高い言葉を一つだけ決めることは不可能である。話し言葉と書き言葉では、頻繁に使われる語彙が異なるからだ。

 ロシア語学研究所によれば、近年、日常的な会話やチャットなど、話し言葉と書き言葉の両方で最も頻繁に使われているのは、「ок」(オーケー、了解、わかった)という言葉である。

 この言葉が広く普及した理由は、短く、伝達する情報が明確で、意味が一義的だからだ。

6.最も古い言葉

ロシア・ナビ(OpenAIによって作成)

 古代ロシア語の中で最も古い言葉を一つだけ特定することは不可能だ。まして、スラヴ諸語の共通の祖先であるスラヴ祖語までさかのぼれば、なおさら難しい。

 しかし、言語学者たちは、どのような種類の言葉が長い歴史の中で変化しにくく、言語の中に残りやすいかを指摘することができる。

 そうした言葉には、代名詞、一部の数詞、親族関係を表す言葉、身体の部位の名称、色を表す言葉などがある。

 また、「огонь」(火)、「большой」(大きい)、「женщина」(女性)、「рыба」(魚)といった言葉も、言語の歴史を研究するうえで重要な手がかりとなる。

 言語学者たちは、こうした基本的な語彙を比較することによって、言語同士がどの程度近い親族関係にあるのか、といったことも調べている。

7.最も人をいら立たせる言葉

ロシア・ナビ(OpenAIによって作成)

 ロシア語の話者を最も「бесит」(むかつかせる、いら立たせる)言葉を突き止めることは、ほかの「ナンバーワン」の言葉を探すよりも、いくらか簡単だ。十分な人数を対象に、代表性のあるアンケート調査を実施すればよいからだ。

 2026年9月、電子書籍サービス「リトレス」と調査会社「Magram MR」が、18歳以上の1000人を対象に調査を実施した。

 その結果、ロシア語の話者を最もいら立たせる言葉は、「кринж」(英語の cringe に由来する若者言葉。他人の言動に対して感じる強い気恥ずかしさや嫌悪感、「見ていられないほど痛い」という感覚を表す)であることがわかった。

 回答者たちは、このほかにも、さまざまな俗語やスラング、外国語からの借用語を挙げた。

 第2位には、「кейс」(英語の case に由来し、事例や具体的な案件を意味する言葉)、「триггерить」(英語の trigger に由来し、何かをきっかけに強い感情や反応を引き起こすこと)、「хайп」(英語の hype に由来し、話題性や世間の過熱した注目を意味する言葉)、「фейк」(英語の fake に由来し、偽情報や捏造されたものを意味する言葉)が並んだ。

 もっとも、人々をいら立たせる言葉は、時代によって異なる。

 プーシキンの時代には、「панталоны」(パンタロン、長ズボンの一種)、「фрак」(燕尾服)、「жилет」(ベスト)といった言葉が、当時の人々にはひんしゅくを買うような、けしからぬ言葉と受け止められていた。

 作家コルネイ・チュコフスキー(1882~1969年)は、著書『Живой как жизнь』(『生命のように生き生きと』)の中で、かつて「факт」(事実)という言葉が人々をいかにいら立たせたかを回想している。

 そのチュコフスキー自身も、「пока」(もともとは「今のところ」「その間」を意味する言葉)を「またね」「さようなら」という別れの挨拶に使うことには、断固として反対していた。

 新語が登場したり、古くからある言葉が新しい意味で使われたりすると、母語話者たちはしばしば強い反発を示し、そうした用法を認めようとしない。

 しかし、それらの言葉がいったん言語の中に定着してしまえば、次の世代の人々は何の違和感もなく、当たり前の言葉として受け入れるようになる。

 *記事の完全版(ロシア語)は、言語情報サイト「Gramota.ru」で公開されている。