『松林の朝』の作者はシーシキンだけではなかった?
お菓子の包装紙にデザインされて親しまれたこともあり、シーシキンの『松林の朝』を知らぬロシア人はいない。しかしこの絵のラベルをよく見ると、もう1つ、K.サヴィツキーという署名がある。一体、この傑作絵画の本当の作者は誰なのだろうか?
2人は友人同士
画家のイワン・シーシキンとコンスタンチン・サヴィツキーは友人同士だった。仕事上でも協同し(例えば、作品『森の雨』など)、苦境の折も互いに助け合った。
共同で画題に取り組む
作品『戦争へ』の制作中、サヴィツキーはふと閃いた。子熊が元気に遊ぶ、朝の松林の情景を絵にしてはどうだろう?素描はシーシキンも気に入り、共同で制作することに合意した。シーシキンは松林を、サヴィツキーは陽気な子熊たちをそれぞれ担当して描くことになった。
不平等な支払い
パーヴェル・トレチャコフは、この絵を4000ルーブルで購入したが、サヴィツキーが受け取ったのは、その1/4のみだった。
「忘れられた」作者
一説によると、サヴィツキーの名が消えたのはトレチャコフの意向だったとされる。サヴィツキーが自作の『イコンの到着』を補修した際、色彩の選択を誤った不手際を、トレチャコフは覚えていたらしい。そのため、作者の名前を抹消することにした、というのだ。しかし結局、確実なことは分からない。何らかの理由でサヴィツキーが自ら、自分の名を削除した可能性もある。