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ロシア人の黒パン愛

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ペリメニやシチーと並び、ロシア料理を象徴する存在と言っても過言ではないライ麦パン(黒パン)。ロシア人の黒パン愛の源はどこにあるのだろうか?

 古くからロシアではパンが焼かれてきたが、主要な材料となった穀物は、比較的最近までライ麦であった。最大の要因は、気候である。

ライ麦の地

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 ロシアでは小麦、大麦、キビ、燕麦など様々な穀物が栽培されてきたが、手間のかからないライ麦は厳しい気候、特にロシア北部での栽培に最も適していた。歴史家によると19世紀当時、ロシアのヨーロッパ側50県のうち40県でライ麦は主要作物だった。モスクワでは作付面積の55.6%がライ麦だったのに対し、小麦は1%に満たなかった。

 こうして、ロシアのパンはライ麦粉が主要な原材料となり、色の濃い、黒に近い色の黒パンが広まった。ロシアの伝統的なパン作りでは数種類の粉を混ぜ合わせるが、特徴的な濃い色合いはライ麦の粉に由来する。

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 ロシアでは9~10世紀頃には既に黒パンが広まっており、農民も上流階級も食べた。入手しやすい上、黒パンは白パンと比べて、時間が経過しても硬くなりにくかった。

 ロシアの製パンの特徴の1つが、発酵させたサワードウを使った生地である。これが、独特の酸味を生む。こうしたサワードウ使用のパンは現在でも大量生産されており、消費者の需要も高い。

黒パンの種類

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 現在、ロシアの商店では種類豊富な黒パンが売られており、トッピングも様々。特によく見かけるのが、以下のもの:

  • ボロジンスキー:香り高いコリアンダー入りのブハンカ(キルピチ=煉瓦とも呼ばれる一塊のパン)。19世紀に登場したパンで、現在の製法が確立したのは1933年。
  • ダルニツキー:1980年代から作られている黒パンで、ライ麦60%、小麦40%の配分。
  • カレリアパン:レーズン入り。
  • 穀物入り:ヒマワリの種、カボチャの種、亜麻の種など入り。
  • ザヴァルノイ:こね粉に熱湯をかけて作った生地を使う。

黒パンを使った料理

 黒パンは、シチー、ラッソーリニク、ボルシチ、オクロシカ、きのこスープなど、伝統的ロシア料理のスープと相性が良い。バターや魚やチーズを使ったオープンサンドにも、黒パンを使うことがある。あるいは、黒パンのかけらに塩を少し振るだけでも、なかなか美味しい。

 古来ロシア人の間ではパンに対しある種の畏敬の念を抱いており、現在でもパンを捨てる事を忌避する通念がある。硬くなってしまったパンがあれば、それを何らかの料理に転用する。次のような再利用方法がある:

 クワス一般的な黒パンとイースト、砂糖を使って作る飲料。

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 グレンキ:ニンニクと一緒にフライパンでバター焼きにしたパン。

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 スハリ:塩をかけて乾燥させたパン、ラスク。

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 チューリャ:黒パンを使った伝統的スープ。

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