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世界で唯一のクリスタル・ガラスのイコノスタシスがロシアにある(写真特集)
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ブリャンスク州のジャチコヴォ市には、「『燃える茂みの聖母』のイコンの聖堂」がある(*「燃える茂み」は、「出エジプト記」でモーセが見た、いつまでも燃え尽きない茂みに基づく)。その内装は、地元のクリスタル・ガラス工場によって、古い写真と描画に基づいて制作された。
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ブリャンスク市近郊の小都市ジャチコヴォには、創業200年超の、ロシア全国で知られるクリスタル・ガラス工場がある。1790年に、貴族の女性、マリア・マリツォヴァが創設した。そして、彼女の息子が、グシ=フルスタリヌイ(*「水晶のガチョウ」を意味する)市の有名なクリスタル・ガラス工場を含む、「クリスタル帝国」をロシア全土に築き上げた。
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ジャチコヴォでは、ファセット加工(*表面を削って磨き上げる加工)を施した、非常に芸術的な色合いのクリスタルが生産された。ソ連時代には、この工場の製品は、庶民にも購買可能になり、「ジャチコヴォ」と刻まれたグラスやデカンタは、今でも多くの家庭の戸棚に保管されている。
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2002年に、市内に聖堂が建立され、クリスタル工場が内装を担当した。イコノスタシス、シャンデリアから、壁のタイルにいたるまで、すべてクリスタルで作られており、総重量は15㌧を超える。
この教会と内装には、由来がある。1810年、マリツォフ家はこの同じ場所に、クリスタルで豊かに装飾された壮麗な「主の変容教会」を建てた。
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この街に来て聖堂を目にした旅人たちは、その美しさに驚いた。「教会が、クリスタルのシャンデリアで完全に照らし出されると、イコノスタシスは、あたかもダイヤモンドでできているように見え、無数のカット面が虹色に輝き、並外れた効果を生み出す」。19世紀のシリーズ本『風光明媚なロシア』(全19巻)は、教会をこのように描写している。
革命後、教会は、豪華なイコノスタシスもろとも破壊された。大量の色とりどりのガラスは、廃棄された。幸いにして、地元の博物館には、装飾の写真とスケッチが保存されており、再建の際に使用された。