ナナカマドの夜とは?
ロシアの民間暦にはいくつかの重要な節目があり、その中には夜にまつわるものもある。
伝説によると、7月7日に祝われるイワン・クパーラのお祭りの夜、シダに花が咲くという。その花を見つけた者は財宝の隠し場所を知ることができ、また、悪霊と交信できるようになると伝わる。
また、10月31日から11月1日にかけての「ヴェレスの夜」には、生者と死者の世界の境界が極めて薄くなり、様々な霊とともにヴェレス神が地上に降りてくるとされた。
もう1つ、空を覆い尽くすほどの激しい雷と稲妻の中、人間界に悪霊がやってくる夜があった。これを、リャビノワヤ・ノーチ、すなわちナナカマドの夜と呼んだ。東スラブの人々は、生神女就寝祭と生神女誕生祭の間、つまり8月から9月上旬にかけてこの夜があると信じた。稲妻の光によって、まるで空全体が雀の大群に覆われてさざ波の如く波打っているかのように見えた。そんな天気では鳥も落ち着きなく空を右往左往した。そのため、雀の夜とも称された。
関連する迷信は多い。例えば、この時期には悪霊が生者の世界を脅かし、雷と稲妻は、自然と悪霊との戦いの余波と考えられた。あるいは、ナナカマドの夜の後はナナカマドが実るとされた。実らない場合、長雨が夏の終わりまで続き、秋は冷え込むと信じられた。また、ナナカマドの木は魔除けのお守りともされていた。