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ロシアの珍しい民族楽器10選(動画付き)
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それぞれの民族に独自の音楽がある。ロシアには、ロシア人以外にも多数の民族が暮らしている(ロシア人の民族楽器については以前紹介した)。彼らはどんな楽器を使っているのだろうか?
1. ヤクートのホムス
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ホムスとは、アジアの諸民族のあいだになんらかの形で見られる口琴の一種である。ヤクートのホムスはもともとシャーマンのみが使用していたが、後に一般的な楽器とみなされるようになった。
この楽器はヤクートの文化的なシンボルの一つでさえある。さまざまな自然音を模した「宇宙を感じさせる」深い音色が特徴だ。サハ共和国の首都であるヤクーツクには世界で唯一のホムス博物館があり、2000点を超える展示物が集められている。
ちなみに、演奏家たちによると、口琴のような楽器を弾けばその特別な音響効果のおかげで歯痛が治るそうだ。
2. ネネツのヴィフコ
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ネネツの子どもたちはこの糸を通した小さな木片を「グデェルカ」や「ジュッジャルカ」などと呼ぶ(訳注:露語で前者は「ぶーんと唸るような音を出すもの」、後者は「ぶんぶんとハエの羽音のような音を出すもの」の意)。ただのおもちゃに見えるかもしれないが、これは正真正銘の楽器だ。木片はプロペラのようにくるくると回転して風の音を再現する。
3. ハントゥイ・マンシのナルス・ユフ
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「音を奏でる木」、ハントゥイ族の言葉ではそう呼ばれる。近隣のマンシ族ではサンクヴィルタプという名前だ。これはトウヒの木から作られる3弦または5弦の楽器である。
昔はこの楽器を弾くことができるのは男性だけだったが、今では女性も男性も演奏しているし、しかも小さい子どものうちから教わっている。その音色は、美しい旋律に合わせて昔話を物語るロシアのグースリを思い起こさせるものだ。
4. チュクチのヤラル
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タンバリンは世界各地の民族に見られるもので、伴奏や儀式などに使われている。チュクチ人のタンバリン「ヤラル」は彼らの多くの家庭にあり、大きさや音色はさまざまだ。
他のタンバリンと違って、輪の直径は40−50センチとあまり大きくなく、胴枠も深くない。鼓面の膜としてセイウチやシカの皮が使用される。ヤラルにはふつう鈴のような飾りはついていない。演奏の際には木製の撥(バチ)が使われる。
5. チェルケスのプハチチ
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カフカスのチェルケス人には珍しい楽器プハチチがある。これは鳴子のようなものだ。プハチチは何枚かの小さな木の板を繋ぎ合わせて作られる。この楽器はリズムを取るのに必要だ。
今日その音は多くのカフカス民族音楽アンサンブルの演奏で聞くことができる。また、アドゥイゲ共和国では観光客に人気のお土産である。
6. オセットのウアディンズ
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カフカスに古くから伝わるバグパイプで、皮袋と音管からなる。音管には5つの穴があいており、異なる音域を出すことができる。現在ではこの楽器はほとんど忘れ去られており、その昔どのように演奏されていたのかについての記録は残っていない。
7. チュヴァシのシャパル
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これはチュヴァシに伝わるバグパイプの一種で、彼らは「プズィリ」と呼ぶものだ(訳注:露語で「空気などによって膨らんだ種々のもの」を指す)。シャパルはチュヴァシ人の代表的な楽器だ。息を吹き込むための管が1本と演奏用の穴があいた管が2本からなる。以前は男性だけが弾く楽器だった。
8. ブリヤートのスウール
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本物のブリヤートの吹奏楽器スウール(スールと呼ばれることもある)は6つの穴がありフルートに似たものだ。はるか昔から存在していて今日もなお演奏されている楽器で、現代ブリヤート音楽でも使用される。その音色はどことなく狩猟笛を思わせる。
9. カレリアのカンテレ
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カンテレは古代から伝わるフィン・ウゴル族の楽器で、フィンランド以外でもロシアのカレリア人やヴェプス人に見られる。基本的にグースリに近いものだが、弦の本数は5本から16本までと少ない。今日ではクラシック音楽や民族音楽の演奏に使われている。
10. セリクープ人の竪琴「トル・サプリ・ユフ」
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ハントゥイ族やマンシ族、そしてセリクープ人にはL字型をした竪琴がある。トル・サプリ・ユフという名前は「鶴の首をもった木」とでも訳せるものだ。