映画『砂漠の白い太陽』をおすすめする3つの理由

1. ソビエト東部劇の古典的名作

西側が西部劇なら、ソ連は東部劇である。作中の時代設定は、内戦直後。赤軍兵士スーホフはトルキスタンの砂漠地帯を通って家路についている。道中、彼は土地のギャング・アブドゥッラーが囲っているハーレムの女たちを死の危険から救い出し、カスピ海沿岸のペジェント村に送り届けようと奮闘する。
この映画が公開にこぎ着けたのは、レオニード・ブレジネフ書記長のおかげだという説がある。スリルのある映画を好んだブレジネフは『砂漠の白い太陽』に感激したらしい。本作は公開後の1年間でのべ5000万人を超えるソ連国民が鑑賞した。アメリカを含む130か国で上映権が買われ、アメリカの宇宙飛行士たちも鑑賞した。
2. 宇宙飛行士たちが出発前に鑑賞する

宇宙飛行士のゲオルギー・グレチコによれば、出発前に軽めの映画を鑑賞して緊張を紛らわすよう、医師たちが勧めていたという。当初は、ゲオルギー・ダネリヤ監督のコメディ映画『33』を鑑賞していた。しかしその後、『砂漠の白い太陽』の試写会に行った宇宙飛行士アレクセイ・レオーノフが自らの責任のもと、訓練センターのためにフィルムの複製をもらってきた。
「宇宙空間では強い負荷や無重力、更には死と隣り合わせの危険も待っている。そこで、危険に晒された時の振舞い方を赤軍兵士スーホフから学ぶわけだ。すなわち、勇気を保ち、最後まで抵抗し、かつ、ユーモア精神も失ってはならないのだ」
と、グレチコは回想している。
また、この映画は宇宙飛行士のある種の守護者ともされている。宇宙飛行士訓練センターの映画ライブラリーに『砂漠の白い太陽』が加わったのは、ソユーズ11号クルーの悲劇的な死亡事故の後だった。以降、宇宙飛行士の死亡事故は発生していない。
3. 今も引用され続ける名フレーズの数々をオリジナル音声で

「死に関してはツイてないが、恋にはツキがあるだろうさ」、
「東方ってのは、複雑なものだよ」、
「グルチャタイ、お顔を見せてくれよ」などなど、ロシアの人々に愛される作中のフレーズは枚挙に暇がない。